記憶を失くした歌姫

□第6話
3ページ/8ページ












どれ位歩いただろう。周りは山や畑ばかりで、一向に海の見える気配はない。


太陽がギラギラと照りつけ、私達の体力をどんどん奪っていく。


(銀)「あ゙ぁ…どこまで行っても海なんてねーじゃねーか…。気分的には200キロは歩いてるんですけど」


銀さんが干乾びそうな声で言う。


(妙)「文句言わずに歩きなさい。ちなみにまだ3キロも歩いてないわよ」


(新)「はぁ…はぁ…。水をください…」


(神)「水なら定春の首の樽に入っているアルヨ」


定春の上に乗ってて悠々としている神楽ちゃんがそう言う。


樽の方へ向かった新八君だが、その樽を見た瞬間、さらに死にそうな顔になる。


なんと樽は厳重に蓋が閉められていたのだ。


(神)「ああ、生水は身体に毒だから飲めないようにしてるアル」


(新)「ああ…飲めない…。はははは、あああああ!! み、水をください…」


(あ)「新八君、大丈夫…?」


新八君がその場にがっくりと崩れ落ちた。


(銀)「減量中のボクサーギャグか…。こんな所でやってても何も面白くねーぞ…。暑い時に暑いって言った所でどーにもならない事くらい分かんねーのかよ、オメーはよォ…」


(長)「そうそう、この位の普通のコメント出してるなら余裕でしょ…。ヤバいのはこーゆう時、呂律が回らない…○△※□%」


バタン…


長谷川さんがマンホールの上に倒れる。すると、顔からじゅわ…っと湯気があがった。


(銀)「いやぁ、流石だねェ、長谷川さん。どっかの社長が倒れるときは前のめりって言ってたっけ…」


(神)「焼けたアスファルト〜焦げたほっぺが香ばしい匂いだね〜♪」


と神楽ちゃんが歌う。


銀さんももうじき倒れてしまいそうな足取りで歩いていた。


(あ)「でもやっぱ暑い…」


私は腰まであるその髪を、持っていた髪ゴムでポニーテールにしてみる。


(あ)「あ、ちょっと涼しいかも…」


(銀)「…アレ? 音莉、髪くくって………はっ!」


(あ)「………?」


銀さんの足取りがイキナリ軽くなった。どうしたんだろう…?


(神)「銀ちゃんは普段は見えない音莉のうなじを見て興奮してるアル」


(あ)「な、何言ってるの…」


(銀)「(音莉のうなじが…。ヤバイ…俺、幸せ!)」


銀さんの視線が突き刺さる。ちょっと恥ずかしい…。


しかし私もそろそろ限界だ…。


倒れそうと思った時、青いものが見えた。


(あ)「あれは…海!」


私が叫ぶと、みんなが最後の力を振り絞って歩き出す。


(銀&神&長)「「「「わぁー!!」」」」


(銀)「オメーら、行くぞ!」


「おおー!!」と言ってみんな走りだす。


私とお妙さんはその姿を見ながら、ゆっくり歩いて海へと向かった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ