記憶を失くした歌姫
□第6話
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どれ位歩いただろう。周りは山や畑ばかりで、一向に海の見える気配はない。
太陽がギラギラと照りつけ、私達の体力をどんどん奪っていく。
(銀)「あ゙ぁ…どこまで行っても海なんてねーじゃねーか…。気分的には200キロは歩いてるんですけど」
銀さんが干乾びそうな声で言う。
(妙)「文句言わずに歩きなさい。ちなみにまだ3キロも歩いてないわよ」
(新)「はぁ…はぁ…。水をください…」
(神)「水なら定春の首の樽に入っているアルヨ」
定春の上に乗ってて悠々としている神楽ちゃんがそう言う。
樽の方へ向かった新八君だが、その樽を見た瞬間、さらに死にそうな顔になる。
なんと樽は厳重に蓋が閉められていたのだ。
(神)「ああ、生水は身体に毒だから飲めないようにしてるアル」
(新)「ああ…飲めない…。はははは、あああああ!! み、水をください…」
(あ)「新八君、大丈夫…?」
新八君がその場にがっくりと崩れ落ちた。
(銀)「減量中のボクサーギャグか…。こんな所でやってても何も面白くねーぞ…。暑い時に暑いって言った所でどーにもならない事くらい分かんねーのかよ、オメーはよォ…」
(長)「そうそう、この位の普通のコメント出してるなら余裕でしょ…。ヤバいのはこーゆう時、呂律が回らない…○△※□%」
バタン…
長谷川さんがマンホールの上に倒れる。すると、顔からじゅわ…っと湯気があがった。
(銀)「いやぁ、流石だねェ、長谷川さん。どっかの社長が倒れるときは前のめりって言ってたっけ…」
(神)「焼けたアスファルト〜焦げたほっぺが香ばしい匂いだね〜♪」
と神楽ちゃんが歌う。
銀さんももうじき倒れてしまいそうな足取りで歩いていた。
(あ)「でもやっぱ暑い…」
私は腰まであるその髪を、持っていた髪ゴムでポニーテールにしてみる。
(あ)「あ、ちょっと涼しいかも…」
(銀)「…アレ? 音莉、髪くくって………はっ!」
(あ)「………?」
銀さんの足取りがイキナリ軽くなった。どうしたんだろう…?
(神)「銀ちゃんは普段は見えない音莉のうなじを見て興奮してるアル」
(あ)「な、何言ってるの…」
(銀)「(音莉のうなじが…。ヤバイ…俺、幸せ!)」
銀さんの視線が突き刺さる。ちょっと恥ずかしい…。
しかし私もそろそろ限界だ…。
倒れそうと思った時、青いものが見えた。
(あ)「あれは…海!」
私が叫ぶと、みんなが最後の力を振り絞って歩き出す。
(銀&神&長)「「「「わぁー!!」」」」
(銀)「オメーら、行くぞ!」
「おおー!!」と言ってみんな走りだす。
私とお妙さんはその姿を見ながら、ゆっくり歩いて海へと向かった。