記憶を失くした歌姫

□第2話
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〜銀時side〜


二日酔いで気持ち悪くてトイレに籠っていると、誰かが俺の入っている個室の扉を叩く。


「早くいつもの頂戴って言ってんじゃん! アレがないと私もうダメなの!」


(銀)「いや、いつものって言われても…」


いつものより水っぽいんですけど…。


「何しらばっくれてんのよ! 金のない私はもうお払い箱ってワケ!? いいわよ。アンタらの事警察にタレこんでやるから!」


(銀)「え? 警察に言う? 別にいいけど…。何が? って言われるよ?」


(陀絡)「誰に話しかけてるんだ? ボケが。オメーに用はねーんだよ、ブタ女!」


ダン! と打撃音が響いた、その直後…


(銀)「………!」


個室の扉の隙間から流れてきた、鮮やかな鮮血…。


それを見た俺はスグ様トイレの個室から飛び出す。


床にはあの写真に写っていたハム子が倒れていた。


そして床にへばりついたまま目の前の男達…天人と思われる輩に何かを求めているハム子。


(銀)「ハム子…悪かったな、オイ。男は男でもお前…エライのに引っかかってたみてーだな」


すると、長髪の天人と思われる男がやってきた。さき程した声の主だ。


(陀絡)「ぱぱっと殺って帰るぞ。夕方から見たいドラマの再放送があるんだ」


相手が剣をこちらに向ける。


(銀)「俺もだ」


(陀絡)「俺は元来、人嫌いの激しいタチじゃねェ。だがこれだけは許せんというのが三つあってな。一つ目は、仕事の邪魔をする奴。二つ目は便所に入っても手を洗わん奴。三つ目は汚らしい天然パーマの奴」


(銀)「へっ…」


(陀絡)「全部…該当してんじゃねーかァァァァァァ!」


いきなり攻撃をしてくる天人の男。


こっちはそれをかわし、まず周りのザコ共に手をつける。


(銀)「そいつは光栄だ。ついでに俺の嫌いな奴三つも教えてやろうか?」


言いながら俺は木刀を振り上げる。


(銀)「ひとーつ、学園祭準備にはしゃぐ女子!」


ガゴン!


「ぐへっ…!」


(銀)「ふたーつ、それに便乗して無理にテンションあげる愚の骨頂、男子!」


ズドン!


「がはっ…!」


(銀)「みーっつ、それら全てを抱擁し優しく頬笑む教師!」


ゴキッ!


「ぐはっ…!」


周りのザコ共はあっという間にくたばる。


(陀絡)「てめェ、要するに学園祭が嫌いなだけじゃねーか。よほど暗い青春を送ったな」


(銀)「てめー程じゃねーよ。いい歳こいて便所でスーッパッパか? もっとも、てめーらが好きなのはシャレにならねェ葉っぱみてーだがな。おたくら天人が来てからアブねーもんも増えたからよォ。困るぜ、若者をたぶらかせてもらっちゃ」


(陀絡)「たぶらかす? 勝手に飛びついてきたのはそのブタだぞ? 望み通りのもんやったのにギャーギャ騒がれてこっちも迷惑してんだ」


(銀)「そうかい。バカ娘が迷惑かけて悪かったな。連れて帰って説教するわ」


だがハム子を脇に抱えてトイレの扉を開けると、その外では天人達…ザコの集団が待ち構えていた。


(銀)「オイオイ、みんなで仲良く連れションですか? 便器足んねーよ…」


とその時…


「コラァ、面倒かけんじゃねェ!」


声のした方を見ると……



(銀)「………!」





……敵に抱えられ運ばれている神楽、新八、音莉がいた。


(銀)「新八、神楽、音莉! オイ、どうしたんだ!」


しかも三人の目はどこか虚ろになっている。


(銀)「てめーら、何しやがったんだ!!」




護りたいのに…これ以上失いたくないのに……大量の敵に阻まれてこれ以上進む事が出来ない。




(陀絡)「お前、目障りなんだよ」


突然、さっきの長髪がどんどん攻撃をしかけてくる。


避けているうちに、壁まで追いつめられ…


グサッ!!


(銀)「がっ…!」


左肩を刺され、そのままハム子と窓を突き破り落下していく中で、出会って数日しか経っていない女の顔を思い浮かべながら、俺は意識を手放した。
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