記憶を失くした歌姫

□第8話
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〜新八side〜


(新)「おはようございます」


朝、万事屋に出勤してきた僕は、店の前で掃除をしていたお登勢さんに挨拶をする。


(登)「おや、新八かい。おはよう」


(新)「お登勢さん、今日は早いですね」


(登)「アンタらの連中がぐーたらなだけさ。それはそうと、先月の家賃今日までに払ってもらう約束だよ。ロクでなしの主人に伝えておいておくれ」


(新)「あ、はい。すいません…」


(登)「はぁ…アイツもいい加減結婚でもして、もうちょっと責任感というものを持ってもらいたいねェ」


(新)「アハハ、そうですね」


銀さんが結婚か…。絶対あり得ないな。











(新)「おはようございまーす」


万事屋の扉を開けると、いつもなら音莉さんの声が必ず返ってくるのだが、今日は聞こえない。


(新)「アレ? 定春、みんなは?」


ソファーで寝ている定春に問いかける。


(定)「あう…」


恐らくまだ寝ている、とでも言っているのだろう。


僕は順番に部屋を開けて起こしていく事にした。


まずは神楽ちゃんを起こす。


(新)「はーい、起きて。朝だよ」


神楽ちゃんの部屋の襖を開けて、そのまま銀さんの部屋へ。


(新)「銀さん、結野アナのお天気注意報始まっちゃ……えっ!?」


銀さんの部屋の襖を開けた瞬間、僕はとんでもない光景を目にした。


(新)「………」


とりあえず、一度襖を閉める。


(神)「ん〜? 何やってるアルか? 新八」


神楽ちゃんが起きてきて、こちらにやってくる。


(新)「来るなァァァァァァ!」


(神)「銀ちゃんに何かあったアルか? ……はっ、ストパーか? ストパーあてたアルか!?」


神楽ちゃんが僕を突き飛ばし、襖を開けようとする。


僕はそれを必死に押さえる。


(新)「やめろォォォォォォ! あっちには薄汚れた世界しか広がってねーぞ!」


しかし神楽ちゃんは事もあろう事に襖を開けてしまった。


(あ)「きゃあああああ! 寝坊した! ってみんな、銀さんの部屋の前でなにやって…」


急いで起きてきたパジャマ姿の音莉さんが、銀さんの部屋を覗き込む。


(あ)「………」


そこには銀さんに抱きついて眠る、藤紫色の髪で忍者の服を着ている女性の姿が…。


(銀)「んん…なんだよやかましいな……ん?」


銀さんが目を覚まして横を向くと、なんと銀さんもビックリ。


(銀)「ん? …ん? …ん!? んんんんん!?」


(あ)「あ…あぁ………」


バタン…


音莉さんがその場に倒れてしまう。


(新)「あ、ちょっと音莉さん! しっかりしてください! 音莉さん!!」


(神)「音莉! これが現実アル。現実から目を逸らしちゃ駄目アル!」


(あ)「現…実……?」


がくっと音莉さんの首がうなだれる。


(新)「神楽ちゃん! それは逆効果だよ!」




ていうかどうして音莉さんは倒れたんだ?


もしかして…。
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