記憶を失くした歌姫

□第2話
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私が万事屋に来て数日が経ったある日。


仕事の依頼がきたので、私達は依頼人の家を訪ねていた。


ちなみに私にとっては初仕事だ。


「いやァ、今までも二、三日家を空ける事はあったんだが、一週間ともなると…。連絡もないし、友達に聞いても一切知らんときた」


銀さんは二日酔いらしく、ダルそうな顔で話を聞いていた。ていうか聞いているのか? 出してもらった水も溢している始末である。


(新)「しっかりしてくださいよ。だからあんまり飲むなって言ったんスよ…」


神楽ちゃんは最初から聞く気がないらしく、庭の鹿威しを眺めていた。


「親の私が言うのもなんですが、キレイな娘だから何か変なことに巻き込まれているのではないかと…」


そんな私達を気にせず話を続ける依頼人さんは、写真とりだす。


見せられた写真には金髪でガングロでポッチャリの…私が言うのもなんだが、キレイとは言い難いような女性の写真だった。


(銀)「そうっスね…。なんかこう…巨大な……ハムを作る機械とかに巻き込まれている可能性がありますね」


(あ)「あぁ、ちょっと銀さん!」


「いや、そーいうのじゃなくて、なんか事件とかに巻き込まれているんじゃないかと…」


(銀)「事件? あぁ、ハム事件とか?」


(新)「オイ、大概にしろよ。折角きた仕事をパーにするつもりか…。


……でもホント、コレ僕らでいいんですかね? 警察に相談した方がいいんじゃないですか?」


「そんな大事には出来ん! 我が家は幕府開府以来徳川家に仕えてきた由緒正しき家柄。娘が夜な夜な遊び歩いていると知れたら一族の恥だ! なんとか内密の内に連れ帰ってほしい」


(銀)「………(ったく『キレイな娘』とか言うからちょっと期待したのに、なんだ? このハム子は…。キレイって言うのはな、音莉みたいな奴の事…あ? いや、でも音莉はどっちかっつーと可愛いか? いや、でも…あああああああ!!)」


(新)「銀さん…何か分かりませんけど、戻ってきてください。一人変顔大会になってますよ…」


(あ)「あはは…」



なんかしきたりとか攘夷戦争もだし、幕府に絡むものってどれもこれも大変なんだな…。




「お嬢さんも、夜遊びには気を付けなよ。お嬢さんみたいな子にはスグ男が寄ってくるからね」


すると銀さんが机をバンと叩いて立ち上がった。


(銀)「なにィィィィィィ!? お父さん、夜遊びなんて許しませんよ!?」


(あ)「いや、心配しなくても男性が寄ってくるような事は…」


(新)「銀さんも人の事言えないですけど…」


(銀)「お前はいい加減自分の可愛さに気づけェェェェェェ!! あ、いや…やっぱキレイか? いや、やっぱ……」


(新)「あの…勝手に葛藤始めないでください」


(あ)「………///」


やっぱりそんなに言われると恥ずかしい…。


「あの…」


(あ)「はっ、ごめんなさい!」






結局私達はその依頼を引き受ける事にした。
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