氷の薔薇

□氷の中で 第一章 「再会」
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『ん…んぅ』

地獄の記憶から目を覚ませば、そこは見慣れたようで見慣れない場所。


『そうか…私は』

統制機構にスカウトされて、昨日から此処に来たんだ。

『…』

他の部隊に挨拶しないといけないんだっけ。

『…行くか』

正直、会いたくないのもいるが…。

私は感情を表に出さないようにして、部屋を出た。



『…』
こんこん、と拳が少し痛むがそれは我慢する。
「入れ」
『失礼します』
そっとドアを閉める。

「っ!?」
『昨日から第7師団に配属になりましたシノハラ=サツキ少尉であります。今日は各部隊に挨拶に回った次代であります。以後、お見知りおきを』
「…」
『何か質問等ありましたら書類を通じてお知らせ下さい。それでは』

私が下がろうとすると、ジンは。

「サツキ…!!」

私の背後から抱き締めてきた。

『…おどき下さい。キサラギ少佐』
「昔みたいに呼んでよ。ジン…って」


昔。

『今は階級がありますので致しかねます』
「ここなら誰もいないから…いいでしょ?ねぇ…サツキ『少佐』…?」

私は冷たく。

『もう昔には戻れません』「で、でも、ジンって呼んでくれたって『今は上司と部下ですから』…」
「…何で?…サツキ、あの時もだよね。…士官学校の時も…冷たかった」
『…それが私です』

私はジンのてを振り払い、部屋を出た。

「…サツキ」



『…』
ごめん…ジン。

でも分かって。

貴方には…。

ドンッ、という音がした。
誰かにぶつかったのだろう。

『あ…申し訳ありません。余所見をしてしまい…』
「いえいえ、お気になさらず…おや?…貴女は確か昨日配属になった…」
『あ…えっと、私はシノハラ「シノハラ=サツキ少尉…ですよね?」は、はい』

何で知ってるんだろう。

「私、諜報部のハザマですよろしくお願いしますね」『あ…はい』

そっか。諜報部だから…。

「それで?何かありました?」
『え?』
「何か悩みでもありそうな顔でしたので…相談に乗りますよ」
『い、いえ…大したことではないので。ただ…』
「ただ?」
『…昔の友人に会っただけです』
そう言うと、興味深そうなハザマ大尉。
「…昔の友人?」
『キサラギ少佐…です』
「へぇ!あのキサラギ少佐とご友人なんですか?これは意外ですね」
『あの…この事は他言無用にしてくれませんか?』

そう言えばハザマ大尉は考え込んだ様に手を当てる。「良いですけど…一つ条件があります」
『何ですか?』
「暇だったらで良いんですが…私の秘書官してくれません?」
『え?』
「あー秘書官っていっても私に紅茶を注いだり、世間話をしたり…みたいな感じで良いんですけど…駄目ですかね?」
『それくらいでしたら…構いませんが「本当ですかぁ!嬉しいなぁ」…ふふ』
「っ///い、いきなり何です?」
『いえ…ハザマさんは面白いなぁと思いまして…』
「そうですか?改めてそう言われると…恥ずかしいですね…ふふ///」

そう言って、中々良い雰囲気になりつつあると…。

当然それを邪魔する者も現れるのが当然という訳で。

「っ!サツキッ!」
『!…キサラギ…少佐』

先程までの笑顔は消え、強張る様な表情を見せる。

ハザマもそんな二人を見て複雑な関係を知る。

胸の内に残る虚無感も。

『…ハザマ大尉、今日はこれで失礼致します』
「え?えぇ…」
「待て!サツキ!」

ジンがサツキの手を掴む。

サツキは構わず歩を進める

それをハザマは黙って見る

「……サツキ…ね」





「ッ!待て!待てと言っているだろう!サツキッ!」『…』
「待って…待ってよ…サツキ…サツキぃ…っ…待って…よぉ…」
『…!?』

ジンは、泣いていた。

「ただ…僕は…っ……サツキに……ひぐっ…呼んで…ほし…かった…の……」
『っ……』
「ね……ジンって…よんで…よ…サツキぃ…」
『私、は…』
「サツキ…」
『…ジン』

私のその一言だけで、ジンは心を踊らせる。

「サツキ…!」
『ジン』
「っ///」
『ジン…』
「〜っ///サツキ

ジンは予告もせず、口付けを交わす。

『んむっ!?』
「あ…はぁ……は……んん…」
『っ!!っ…ジン…』
「んぅ…も…ちょっとぉ」『ジンっ…や…』
「えへへ…も…少し…」

まだ口付けは続く。




『っ…はぁ…はぁ』
 

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