短編

□かっこいい(仮)2
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「100円ショップ?」

「うん!クラスの装飾に使う画用紙買うの!!あと段ボールも貰ってくる!」



私たちの学校の文化祭が
近づいてきました。

放課後はどのクラスもその準備に追われています。

私は装飾班の買い出し係として、足りなくなった画用紙と
段ボールを調達しに行くことになりました。


廊下を早足で歩いていると、稲田ちゃんに遭遇したのです。


「……おま…段ボールなんて運べるの?」

「うん!」

「……うーん…」

「どうしたの?」

「一緒行くよ」

「稲田ちゃん自分のクラスの準備あるでしょ?」

「……じゃあ、あたしも買い出しとして行く。…ちょっと待ってて、買ってくるものあるか聞いてくる」

稲田ちゃんは自分のクラスに入っていこうとします。

「ち!ちょっと待って!…そこまでしてなんで来てくれるの…?」

「なんでって……」

「なんでって…?」








「お前ちっちゃいから段ボール運べない気がするんだよ」



「な……!」


少しでも少女漫画的展開を期待した私がバカでした。


「まぁまぁ待ってろって。幼稚園児さん」

「〜〜〜っ」


くやしすぎる。

だけど、なんだかんだ言って稲田ちゃんは優しい。

そういうところが
また好きなところです。

その後
稲田ちゃんも画用紙が欲しいと頼まれ、私たちは買い出しに出掛けました。






「画用紙どこだっけ……」

自転車で約15分。
100円ショップに着いた私たちは早速画用紙を探します。

すると……

「あ!!」


いきなり稲田ちゃんが何かを思い出したかのように
100円ショップ内を駆けていきます。


画用紙の場所でもわかったのかなぁ…?

稲田ちゃんを追います。


稲田ちゃんは突き当たりを右に曲がって、止まりました。



「かわいいっ」

棚の前で止まるや否や稲田ちゃんは棚にあるものを指差しました。

見るとそこには
かわいいかえる模様のプラスチックのコップやうさぎ模様のプレートがありました。

「かわいいっかわいいっ!わぁ!わぁ!」

いつもの稲田ちゃんでは考えられない喜びっぷりです。

まるで
人が変わったようです。

そうです。

稲田ちゃんはこういう幼稚園児が好きそうな動物の模様が大好きです。

こないだ一緒に駅ビルに買い物に行った時も、かえるのお財布を見つけて目をキラキラさせていました。


かわいくって仕方ない。
鼻血が出そうでした。


いや…ほんとマジかわいいんだってば。




「コップ、買うの?」

「ううん…お小遣い入ってからにする」

稲田ちゃんはしょんぼりしながら、さっきまで手に取っていたかえるのコップを棚に戻しました。

その姿も
何とも言えません。

「…かわいいなぁ」

思わず口からこぼれてしまいました。

「……はぁ?」

「かわいい」と口にした途端稲田ちゃんは私を睨んできました。

いつもこうです。
私が稲田ちゃんに「かわいい」と言うとすぐに睨まれます。

照れ隠しなら
いいんだけどな……。

「かわいいなぁ…」

「…うるさい。早く画用紙の棚行くよ」

「はーい」


もうちょっとかわいいとこ見たかったなぁ……。

私は
稲田ちゃんの背中を追います。




「あ!段ボールあったよ」

100円ショップと隣接しているスーパーで「ご自由にお持ちください」段ボールを見つけました。

私が段ボールを抱えようとするとするりと段ボールを取られてしまいました。

「稲田ちゃん、私の横取りしたでしょ」

「ばーか。あたしが何の為にきたかお忘れ?」

そう言って稲田ちゃんは段ボールを沢山抱え始めます。

やっぱり
頼りになるなぁ……。




学校までの帰り道。

「はぁ…早くお小遣い入らないかなぁ…かえるさんのコップ早く買いたい……」

「かえるさん」って!
「さん」って!!


稲田ちゃんはかっこいいところもあるけど、
やっぱりかわいいです。

-end-

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