短編

□うちの困った彼女さん
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爽やかな朝。

こういう日は
教室がある2階までの階段をいつもより軽やかに上ってみる。



階段を上りきって
廊下を歩く。

廊下の窓から
心地いい風が入ってきて
髪の毛を少し浮かせた。


あぁ、今日は爽やかな1日を過ごせただろうに。





………この足音さえ
聞こえなければ。




ダダダダダダダダッ……





バシッ

「うぉっ」

「くくっ…今日もいいケツしてるね、ねぇちゃん」

「おまっ……」


そう、こいつが変な挨拶をしてこなけりゃ。



前沢由依子(マエサワユイコ)。
あたしの彼女であり、
変態である。

「そんな照れるなってー」

「照れてない、話しながら揉むな!」

由依子は変態だ。
朝は挨拶代わりにあたしの尻を叩いてくる。

酷いときは、今みたいに揉んでくる。


「真樹(マキ)ちゃんはケツだけじゃ足りないのかなぁ?」

変態はさっきまで尻を揉んでいた手を今度は胸に伸ばそうとする。

こいつ……



「……people!!…public!!」



あたしはそう叫んで変態野郎の手を払いのけた。

「いったぁ…真樹ちゃんひどい!!」

ひどいのはどっちよ!!


うだうだ言ってる由依子を置いて教室に入る。

後ろから聞こえる間抜けな声は完全無視した。






「まーきーちゃん♪」

1限目終了後の休み時間。

由依子があたしのクラスにやってきた。

「?なーに」

「現文の教科書忘れた……貸して〜…」

「ちょっとまって」

由依子が忘れ物とは珍しい。
こうみえて結構真面目ちゃんなのに。

「はい」

ロッカーから教科書を取り出して渡す。

「ありがとう♪ついでに真樹ちゃん質問していい?」

「ん?何?」


「今日のパンツ何い…バシッ…

なんか…こいつに教科書貸したくなくなってきた。





放課後

「真樹ちゃーん♪今日からテスト一週間前だから部活無いよね?一緒帰ろー」

由依子がさっき以上に上機嫌でやってきた。


「いいよ。…てか由依子、なんでそんな機嫌いいの?」

「気になるー?」

「いや…べつに」

由依子の機嫌が良いときは大抵あたしは被害を受ける。

やめよう、変に訊くのは。

「教えてあげるよ♪」

由依子は笑顔で言うと、
そのままあたしの耳に口を寄せて小声で言った。








「ありえない…なんで由依子はそんな変態なの」

駐輪場で自転車に跨がりながらあたしはポツリと言う。


あのとき、由依子がコソコソ言った言葉―――



『真樹ちゃん、今日は水色のヒラヒラブラなんだね♪かわいい♪シャツから少し透けてたおかげでわかっちゃった』





「はぁ……」

ほんとにどうしようもない。


「真樹ちゃーん!大丈夫?」

由依子が自分のクラスの駐輪場からあたしのところに自転車に乗って来た。

「……大丈夫」

「真樹ちゃん、今日は由依子の家で勉強しない?」

あー……

由依子が目をぱっちりさせながら訊いてくる。

ぱっちりした目の奥には野獣がいた。



「……いいよ」


由依子の家で何をされるのかわかっているのに、ほいほいついていくあたしは、

……やっぱり変態彼女が大好きらしい……。


-end-

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