短編
□コンテスト
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「男装コンテストにエントリーされたぁ!?」
学校からの帰り道。
あたし江島鈴南(エシマリンナ)のかっこいくてかわいい彼女、水城怜衣(ミズキレイ)ちゃんから衝撃的な言葉を聞いた。
「う…うん。されたとも言うし…したとも言うし……」
頭を掻きながら
怜衣ちゃんは言う。
「そ…そんなぁ……」
怜衣ちゃんが男装に興味があるのは知ってた……。
でも、この学校の文化祭で
男装コンテストをやるのは予想外だった……。
去年は
やらなかったのにぃ……。
「うぅ……」
「ただ男装するだけだから、そんな顔しないで」
…無理だよ。怜衣ちゃん。
怜衣ちゃんは自分がどれくらいかっこいいかわかってないよ。
脚長いし…
髪の毛ショート
似合ってるし……。
雰囲気が王子様だし……。
実はファンクラブもできるかもしれないって噂もたってるんだよ?
そんな怜衣ちゃんを今、大勢の前に立たせちゃったら……。
しかも男装。
かっこいい怜衣ちゃんを沢山の人に知られちゃう。
それで…あたしなんかよりもずっとかわいい子に告白されちゃったら……。
「〜〜〜〜っ」
「鈴南……」
ポンっ
怜衣ちゃんの手が
あたしの頭に乗っかる。
「あたしステージ立つ時、鈴南のことしか見ないよ」
「れ…れいちゃん……」
怜衣ちゃんはあたしの頭をポンポンしながら続ける。
「鈴南は考えすぎだよ。第一、あたしそんなかっこよくな「怜衣ちゃん!怜衣ちゃんわかってないよ!!怜衣ちゃんはすごい注目されてるんだよ!?」
思わず怜衣ちゃんの言葉に被せてしまった。
「怜衣ちゃん、すごいかっこいいんだよ!?だからいつ、どんな子に取られちゃうかわからない……」
あ……泣きそう……。
涙で視界が霞んだ。
「鈴南、聞いて」
怜衣ちゃんが手を繋いできた。
怜衣ちゃんの手、
相変わらず冷たい。
「あたしはね、鈴南が好きだよ。考えすぎで、あたしのこと大切にしてくれる鈴南がすごい好き」
「怜衣ちゃん……」
「だから、万が一他の誰かに告白されても、オッケーなんてしないからね」
怜衣ちゃんはそう言って、ますますあたしの手を強く握った。
あぁ…好きだな。
そう思った。
怜衣ちゃんがそうやって
好きを証明してくれるところ
すごく好き。
怜衣ちゃんに応えるようにあたしもその冷たい手を握り返した。
「怜衣ちゃん!男装したら真っ先にあたしに見せてね!!写メでもなんでもいいから!」
「りょーかい」
「でっ…出るからには!グランプリ目指してね!!」
「くくっ…はいはい」
-end-