Book:J.H
□Q6.With Kuroko
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初夏と言えども、真夏時よりかは早い夕暮れを迎え、今はもう太陽は西の山に沈んでしまっている。
体育館での騒動は取りあえず一段落した。
だが、下校中の私の隣を歩いているのは、とてつもなく影の薄い彼--黒子テツヤだった。
何故、私が彼と共に並んで帰っているかと言うと、それは少しだけ時を遡り、私が男子バスケ部マネージャー就任を了解してからのこと。
*****
「じゃあ小春、これ」
目の前に差し出されたのは一枚のプリント。
上の方には、素っ気なく『部活動登録用紙』と書かれていた。
黙って受け取ると、赤司は満足そうな顔をしていた。
そんな顔を見ると、これまでの事が全て赤司の手の内だったのではないかという疑問が頭をよぎって仕方ない。
まぁ、これでよかったのかもしれないけど。
「それじゃあ、今日はこれくらいにするか」
気がつくと、辺りはオレンジの輝きに包まれていた。
「本当なら、小春の力を暴こうかと思ったんだけどね。僕の推測も含めながら」
暴くって……。
「…時間も時間だから、続きは明日の練習にまわすとしよう。以上だ。解散」
赤司の話は短くまとめられ、帰る支度をしに行くもの、自主練をするものに
別れた。
私は帰る支度をしに行こうとした。
だが、突然赤司に呼び止められた。
「小春、テツヤ、ちょっと来い」
訝しげな私と、首を微かにかしげる薄水色髪君ことテツヤ。
まだ何かあるのかと思いきや、切り出された言葉は、私達二人を大いに驚かしてみせた。
「今日は二人でテツヤの家に行くように」
「……は?」
私は今日通算何回目かの間抜けな声を発してしまっていた。
だが、それは、私の隣にいたテツヤも同様だった。
「赤司君、言っている意味が分からないんですけど…」
「右に同じく」
私とテツヤの間抜け顔がお気に召したのか、赤司は何とも言えない表情をしていた。
「小春は今日、テツヤの家で夕食をご馳走になるようにということだ。ああ、テツヤのご両親にはもう連絡済だから、心配しなくていい」
いや、心配どうのこうのよりも、いつ連絡したの?!
ずっと体育館にいたよね…?
そんな私の内心を見透かすかのように、赤司は続けた。
「体育館に来る前には済ませておいたよ」
「……えー…っと、つまりそれは、その段階から私はもう入部確定だったってこと…?」
赤司は私の質問に呆れ顔をした。
「小春が入部しないこと
なんて、はなから考えてなかったな」
「少しは懸念してよ…」
私は力なく項垂れた。