Book:H

□Q2.必然の遭遇
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大規模な部活勧誘会から数時間後の放課後、男子バスケ部に入部希望をした新入生と現バスケ部員達が、まだ真新しい体育館に集まっていた。

勿論、マネージャー希望の彼女も体育館にいる。

しかし、男子バスケ部なのに女子がいるということから、二年生のバスケ部員は輝いた眼差しを、そして入部希望の新入生は好奇の目で彼女を見ていた。

やたら変な視線と、見えないが、送られる星がピシピシと当たるようで、彼女は体育館の角に陣取っていた。

「よーし、全員揃ったなー。一年はそっちな」

ざわつく体育館の中でリコの声が響く。

「えーっと、そこいい?私は男子バスケ部カントク、相田リコです。よろしく!!」

リコが"カントク"と言った瞬間、新入生から『嘘だろ!?』といった感じの叫びが上がる。

「あ、あの…あっちの先生が監督なんじゃ…?!」

「ありゃ顧問の武田センセだ。見てるだけ」

凄いなーあの人マネさんやなかったんかー!

彼女も叫び声こそあげはしなかったが、内心驚いていた。

「……じゃあまずは、シャツを脱げ!!」

「え゛え゛え゛〜〜!!?」

ドヤ顔でそう言い放つリコに対し、更なる疑惑の叫びが体育館内に響き、木霊する。
なにすんやろ?

彼女はリコの奇妙な物言いに惹かれ、隅っこのテリトリーから出て部員達が集まる方へ歩いていった。

その間にも、新入生達は次々と上半身裸になっていく。

うわぁ〜なんちゅう絵や。

彼女自身、男の上半身を見慣れているのか、特に目を手で覆うなどの行為は全くせず、リコの行動をただただ凝視していた。

「………なんだコレ……」

ふむふむ、と並んだ新入生の裸体をリコは眺める。

そしてリコが言ったのは、各々の身体能力だった。

それも、言い放つ身体的特徴はどれも的確であり、指摘された新入生達は目を丸くさせている。

「どゆこと!?」

「てか体見ただけで…?」

そう疑問を口にする彼らに、二年生の人物…日向順平が答える。

リコの父親がスポーツトレーナーであること、幼少時からその仕事場で肉体とデータを見続けるうちに、体格を見ればリコの眼には身体能力が全て数値で見える特技が身に付いたこと。

そう日向が話している間に、リコは火神を見やっていた。

その途端に、明らかにリコの顔が驚愕を顕にした。

ぼーっと火神を見ていると、日向に呼ばれリコははっと意識を戻した。

「全員みたっしょ。アイツでラスト」


ラストじゃないわ!関ちゃん!」

「んあっ!?は、はいぃっ!」

急に呼ばれ、裏返った声で返事をすると、リコが彼女の元に急ぎ足で駆け寄ってきた。

「二年生には念願の、女子マネージャーの関夏海(セキナツミ)ちゃんよ!!」

ガシッとリコが彼女…関夏海の肩を掴んで部員たちの方へ向かせると、周りからは「うおっしゃあああぁぁーー!!」などの雄叫びに近い叫びが響いた。

「あ……えと、関夏海言います。これからよろしゅうお願いします」

リコに肩を掴まれながら軽く挨拶をして頭を下げると、周りからはよろしくーなどの声がした。

リコから解放されて、夏海は部員たちの作る円から少し離れると、リコが徐に口を開いた。

「あっ、そうだ。……黒子君てこの中いる?」

リコが何気無く呼ぶ"黒子"と言う言葉に、夏海はビクッと肩を震わせた。

黒……子?

「あ!そうだ帝光中の…」

「え!?帝光ってあの帝光!?」

周りが騒ぐ中、夏海の背中からは冷や汗が流れていた。

黒子…、帝光中学―……。

「黒子!黒子いるー!?」

部員が総出で辺りを見渡すが、それらしき姿が見当たらないのか、リコが休みと判断し練習開始の合図をした時だった。
「あの…スミマセン。黒子はボクです」

リコの目の前に一人の男子がいつの間にか現れていた。

現れたその姿に夏海は息を飲んだ。

……嘘やろ…?

なんで………なんで……!!?

夏海は震える右手をギュッと握りしめながら、部員たちと話す黒子の姿を見つめていた。
 

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