短編

□手を伸ばせば届く距離に
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雪の降る夜、私は上着も着ずに外にいた。
私は先程までクルークと一緒にクルークの家で、ゆったりとした恋人同士の聖夜を過ごしていた。
しかし些細な事で喧嘩をし、飛び出してきた。
少し、言い過ぎたな…と後悔したが……さすがにもう遅い。
そのまま家に帰る気も起きなかったので街外れの公園にドーム状の遊具の中で空を見上げていた。

雪が少し入って来るが、あまり気にならないのでそのまま星を見ていた。


『クルーク…』


思わず愛しい彼の名を呼んでしまい、いかに自分がクルークに依存しているのか良く分かった。
空を見上げていると、左手を誰かに掴まれた。
この手には見覚えがある。

「……すみれ、突然…出ていくなんて、ひどいじゃないか」
『く、るーく…?何でいるの?』
「探しに来たに決まってるだろ…はぁ…」


クルークは走って来たようで肩で息をしていた。
掴まれた左手をそのまま引っ張られぎゅう、と抱きしめられた。


『……ごめんね、クルーク、私……っ!』
「もうすみれの体、こんなに冷えてるじゃないか…」
『…うん、クルークの体暖かい』


私を包み込んでくれた彼はとても暖かく、ほっとする暖かさだった。


「……すみれ、ごめんよ、ボクが言い過ぎた。だから嫌いに…ならないでくれ」
『嫌いに何てなるわけないじゃん…私もごめんね』


お互いに、謝って二人でどちらともなく笑った。





(手を伸ばせば届く距離に )
(キミは)(貴方は)(いてくれる)

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