book1
□baby don't cry
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ある晴れた日の昼下がり。人混みの街のど真ん中で俺はイライラと一人煙草をふかしていた。
待ち合わせ場所は確かにここだが、いくら待っても女は来ない。
約束の時間はもうとっくに一時間も過ぎていた。
時間を守らないヤツはこちらから願い下げだ。
俺は煙草を踏み潰してその場を後にした。
久々にいい女に出会えたと思っていたが、ツイてない。
ムシャクシャしながら車に戻ろうとした時だった。
人混みの中で、一人泣きべそかいてるガキを見つける。
誰もそいつに気づかないのか、あるいは無視を決めこんでいるのか。声をかけるヤツは誰一人としていない。
やれやれ、ガキは苦手なんだが、こういう時放っておけないのが俺の性分だ。
「おい、どうした。母ちゃんとはぐれたのか?」
ガキが顔をあげる。
やばい。なんて、可愛い顔してやがるんだ。
涙に濡れた瞳が宝石みたいにキラキラして、見つめられると吸い込まれそうになる。
「兄さんがいなくなっちゃったの…」
声まで可愛いでやんの。肩まである長い髪からして女のようだが、無地のTシャツにズボンって服装はちょっと無いんじゃないのか。せめてその顔にはスカートだろう。
まあ、いい。
ガキは苦手だが、これだけ可愛いとなれば話は別だ。
言っとくが、俺はロリコンじゃない。だが、このガキは特別だ。顔がガチで俺好みなのが悪い。
「一緒に探してやろうか?お前の兄さん…」
「ホント?」
ガキの顔がパアッと明るくなった。
「ああ、見つけてやるからついてきな。」
俺はガキの手を引いた。
本当なら真っ先に交番に届けるべきなんだろうが、生憎俺はそこまで善良な人間じゃない。
女の代わりにガキを玩具にしてやる。
まずは親切な大人を演じきることだ。
ガキが俺を信じきった頃合いを見計らって存分に楽しませてもらう。
幼児愛好家の気持ちが少し分かる気がするぜ。
駐車場に着くと、俺は車に乗るようにガキの背を促した。
「この車で兄さんを探すの?」
「ああ、俺の車はすげえんだぜ!お前の兄貴んとこまでひとっ飛びで連れてってやるよ。」
勿論、口からデマカセだが。
戸惑うガキを無理矢理助手席に押し込んで、シートベルトを締めた。
これでもう逃げられない。
「お前、名前はなんて言うんだ?」
「僕…瞬です。」
瞬…か。女にしちゃ変わった名前…って…「僕」…?
「お前、まさか、男か?」
しくじった。女じゃねえのかよ。
まあ、ガキに男も女もねえけどな。要は可愛いけりゃいいんだ可愛いけりゃ。
そう自分に言い聞かせながら、俺は車を走らせた。
ガキは…いや、瞬だっけ。瞬は、所在なさげに窓の外を窺っている。
「心配するなって。必ず兄さんに会わせてやるからよ。」
「…うん、ありがとう…おじさん。」
おじさんはないだろう。せめてお兄さんと言え。
さて、これから何処へ行こうか。人気の無い草村にでも連れて行って、そこで悪戯するってのも悪くねえな。
裸にして、体中を舐め回してやろうか。
嫌がるのを無理矢理ってのもそそられる。
「いやだ。やめて。」なんて泣かれると余計に燃えてくる。
変態的な妄想に浸っていた俺の耳に、突然妙な音が響いた。
グーッ
なんだ?今のは。
「お前、ひょっとして腹減ってる?」
瞬はお腹の辺りを抑えてこくりと頷いた。
ちっ!これだからガキはムードがねえ。
しかしまあ、よく見たらこいつガリガリだし、少し何か食べさせたほうが良さそうだ。
仕方がない。
計画は後回し。まずは腹拵えだ。
俺は、ナビで適当に飲食店を探すことにした。