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□明日、4時44分44秒に電話します
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俺の後輩、もとい恋人は素直じゃない
おまけにちみっこくて、生意気で、主に俺に対して口が達者で、その癖に後で落ち込んでいる
可愛い天の邪鬼な奴
だから付き合い始めた最近も随分と苦労している
一緒に帰ろうとしても照れているのか、もの凄い速さで走り去ってしまうし、メールも何通か出しても一向に返って来ない、電話も一度も出た試しがない
プルルル
プルルル
ブチッ
何度目だろうか、数えた所でキリがない程に聞き流したコール音
やはり今日もこの携帯が倉間と繋がる事は無かった
だが落胆する頭の片隅で、毎回もしかしたら倉間の声が聞こえるかも知れないと、今か今かとコール音を聞く事にらしくもなく胸が踊るのは最早楽しみにすらなっている
こんなにサッカー以外で自分を揺らがせるのはこいつ位だろう
『全く…しょうがない奴だな』
南沢は、一つ苦笑気味の息をついて、密かに倉間と色違いに買った携帯を閉じ、そのままベッドに乱雑に放り投げて目を閉じた
瞼に暗く閉ざされた視界で思案する、早く明日になればいいと
明日もまた倉間を迎えに行くか
昼飯も屋上に誘って一緒に食べてそうしたら放課後も部活で一緒にサッカーをやる
南沢は思考に浮かぶ憎たらしい位に可愛い恋人に、くすりと笑みを溢した
ああ、早く、早く会いたい
『南沢さん…あの俺…実は最近、学校の帰りに誰かに付けられてるんですけど…』
翌日の昼、倉間がおずおずと言った様子で隣で昼食をとる南沢に小さな声で云った
その内容に思わず眉を潜め箸を止める
倉間にストーカーするなんて不届き者が居るとは何て事だ
変に意地っ張りなこいつの事だ、男がストーカーされてるなんて言えなくて俺に渋々相談したに違いない
それにしても何処のどいつだ
俺の目をくぐり抜けるなんて
『ストーカーか?』
『多分…他にも、まるで恋人宛に送る様なメールが幾つも来たり…』
倉間は青ざめて、何処か怯えた様な表情でパックの牛乳を啜る。それは見ていて可哀想な位に
こんなにも倉間を怖がらせるなんて沸々と怒りが込み上げる
本当に
『それに…いくら着信拒否しても4時44分44秒に絶対電話が来るんすよ……』
誰だ、
倉間を安心させてやる為に
今日も電話してやらなくちゃいけないな
企画サイト『忘却』様に提出させて頂きました