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□夢と深層心理
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ふわふわ、ふわふわ
暖かくて明るい、無重力に身体が浮いているような眠っているのに意識があるような可笑しな感覚
何処だ、ここ
『倉間、』
『へ?…みっ南沢さんっ!?』
ふと見知った声がした、暫く聞いていなかった耳につく低い声
勢い良く後ろを振り向くと月山国光のユニフォームを着た南沢さんが立っていた
それは試合で一度見た姿で、俺はそれ以来、南沢さんには会っていなかった事を思い出す
あの人は…雷門を去った時でもう分かるが、全て自分で決めて余り連絡を寄越さない人だから
『な、何でこんな所に居るんですか?月山国光は?』
だから尚更、心配で焦った
わざわざ会いに来るなんて何かあったのか?
情けなく慌てた俺に当の南沢さんは笑って俺の目にかかった方の髪を撫でた
『え…』
『何にもない…ただ倉間に会いたくなった、それじゃ駄目か?』
『は、いや、…は?』
言っている意味が分からない
思わず数秒瞬きを忘れた、呆気に取られた頭で聞き返す
本当に南沢さんなのか?
俺の知ってる南沢さんはむかつく位に頭が良くて、何時も余裕をかましていて、見た目に反して甘い台詞なんて一言も吐かない、澄まし顔の先輩だった筈だ
だが目の前の南沢さんはどうだろう
頭が良い、と言うのは置いておくとしても
澄まし顔なんて程遠いくらいに優しい目で俺を見て、甘ったるいこっちが呆けてしまう程の台詞を吐いて、緩慢な手付きで俺を撫でて笑いかけている
『ごめんな、倉間。黙って月山国光に転校したりしたから…前からずっと謝りたかったんだ』
『そんな、』
『寂しい思いさせてるだろ?何だかんだ言ってもお前、寂しがりやだからな』
『…煩いです』
目の前の南沢さんは綺麗な顔で苦笑した、それを見ると途端に鈍った何かが起こされて胸の辺りでどうしようもなく燻る。頬から耳に掛けて血が集まっていく
本物?偽物?
その問いがどうでもいい事の様に感じた
『また直ぐ会いに来る、倉間』
『南、沢さん…』
熱くて仕方がない頬に髪を掻き分けて、南沢さんの少し冷たい手がすりと入り込む
段々、顔が近付く
自然に目を閉じた
ピピピピピピピピピ
オキロキタロー
オキロキタロー
『………』
目を開けると浜野からふざけ半分で貰った目玉のオヤジさんの目覚まし時計が鳴っていた
夢は心理を表すと聞くが
『……夢落ちかよ』
こんな夢を見るなんて最悪だ
のそりと携帯を開いて待ち受けを見る
『夢じゃなくて、現実で会いに来て下さいよ…』
同じユニフォームでサッカーボールを抱えている一年前のまだ少し幼い顔つきの俺と南沢さんの写った画像にふてぶてしく呟いた
『よ、』
『え…南沢さん!?』
それから一時間後、信介の化身を完成させる為にと神童達とグラウンドに集まると、月山国光のゴールキーパーを一緒に連れた南沢さんが現れ
車田さんと天城さんに泣きながら抱き着かれている光景を見る事となった
(これは予知夢?)