白黒神様と時渡人
□十一篇
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めでたく押し切られるまま学生コーチに任命、及びレジスタンスに仲間入りし数日
いよいよ学生コーチの肩書きを持って本格的にグラウンドに入る事となった
そんな今日、一番案じている事と言えば
『…後輩に指導される、なんて反感買うだろうなー』
最近見付けた屋上の小陰に寝転がって昨日と対して変わらない空に言ってみる、勿論、返事はない
授業中にも関わらずベタに屋上寝転がっている理由と言えば、言わずもがな勿論サボタージュというやつだが成績点はちゃんと取っているので大丈夫だ。問題ない
ふと携帯を開くと授業が終わる三十分前
『あと三十分で授業終了、か…』
授業が終わるまで少し時間がある
ここで少し話を纏めてみよう
初めは、なるべく原作を変えない様にしながら傍観するお兄さんを目指した筈だ
だが転生した事で知らぬ間に所謂チート、分かりやすく言えば卑怯な能力を有してしまっていた身体
サッカー部に勧誘されるが、こんな身体能力でサッカーをすると危険だと判断し入部を拒否
久遠監督から、選手でなくていいから入れと強制入部
現在に至る
ああ、あれか?傍観しながらもせっかくだから少し位関わりたいなんて欲張ったからこんな状況に
うんきっとそうだ、そうだと思いたい
そうでなければこんなに接点が出来るなんて有り得ない
あの場では何も言えず(半ば無理矢理)久遠監督に押され承諾したものの、中身がどれだけ三十路超えていても外はただの中学一年生
それでコーチなんて、いくらスポーツの世界では実力のある者が強者だとしても
もし運が悪ければ先輩方から、親睦を深めようぜなんちゃらかんちゃらと体育館裏に呼び出され『ちょっと運動神経良いだけの一年が』なんて袋叩きにされる可能性もあり得るのだ
『中学生怖いな、…』
感情のコントロールがまだ甘く
世界が狭く、まだ若い芽である中学生は既にオジサンの域にある俺には手に余るんじゃなかろうか
サッカー部室に向かう足取りがとにかく重かった
『…えーという訳で、今日から学生コーチとしてサッカー部に出入りする事になると思うので宜しくお願いします』
目の前の数えきれんばかりの視線を思い切り無視して、つまらない自己紹介を済ませた。久遠監督の一歩後ろで
盾にしてるなんて言わないでくれ好奇の目やら睨みやら、はたまた刺々しい雰囲気やらで居心地が悪いんだ
因みにその鋭く睨んでいるのは一緒に集まっているセカンドの一乃達意外、その他、先輩方諸々
人数大過ぎではなかろうか
俺一人でこんな人数裁けない
若干、情けなくも涙目になって
悟られない様に綺麗に磨かれた床とにらめっこしてみる
ただ、神童や霧野を初め同級生組は嬉嬉と目を輝かせて歩み寄って来て
その神童達も神童で
第一声と言えば
『名無しの、やっとサッカー部に入部する気になったんだな!』
これだ
『いや勘違い…さらさらそんなつもり…』
名無しさんは思わずへなへなと力が抜けた身体に力を入れ直した
そんな気は全くないのに
『ちゅーか名無しのが入部してくれたら百人力っしょ』
『浜野君、名無しの君は悪魔で指導者としてみたいですけど…』
『はっ面白ぇじゃねぇか』
『ああ、これからが楽しみだな』
神童に賛同して浜野や速水、一番マトモそうな倉間ですらが頷き
後ろを見れば一乃や青山が見守る父兄さながらに微笑み
そんな一乃達の背後ではその他諸々の選手から殺気が立ち込める
名無しさんは待ったをかけようとしてタイミングを見失い、行き場を無くした手をどうする事も出来ず上げたままでいた
(なにこの地獄絵図)