*main うたプリ

□夜空の下で誓いのkissを
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 両方から握られる手


一方からは人間みのある温かなぬくもりが
 もうかたほうからは…


当然人間のような温かさはない
けど、私には
美風先輩にも心があると思う


たとえ、なくたってつながっていける何かがあると、そう思う



人じゃなくてロボだって
私は美風先輩が好き



ロボだってことだって先輩の一つの特徴であり魅力だと思う


ロボだからって
嫌いになる必要がない
嫌いになんかなれない



だってそんな美風先輩を好きになったんだから


この気持ち閉じ込めないで
  自分らしく伝えよう


強く握られる両手の
 片方の手を強く握り返した


『私は…
美風先輩が好きです
大好きです』


まっすぐ美風先輩を見つめて
ありのままの自分の思いを伝えた


そう伝えた瞬間
目の前の先輩たちが同時に大きく目を見開いた



その瞳はお互い違う意味を表していた


 報われた喜びの驚き
    と
報われなかった悲しみの喜び


幸せになる一方で
苦しくなる人がいる


それが見苦しいくらい伝わってきた


しばらくだまっていた寿先輩が
悲しそうに

重たそうに口を開いた


「うそ、だよ、ね?」


うそじゃないって聞いてる寿先輩もわかっていいるはず…


 つらい
大好きな寿先輩が悲しむのはつらい


優しくて、いつも笑顔で、おもしろくて、面倒見がいい寿先輩が大好き



 でもそれは恋愛感情じゃない
無理して付き合うなんてよくないし
わたしは美風先輩が好きだから


嘘はつきたくない


うそをつかれる寿先輩はもっとつらいって思ったから


 ここできちんと言わなきゃ


『ごめんなさい
もちろん寿先輩は大好きです。
けど、やっぱり寿先輩は尊敬としての好きなんです』


『わがままだって思われても私は、寿先輩とは今までの仲良しの上下関係でいたいんです。』


『私が好きになった寿先輩はいつも通りの先輩だから。
だから、これからも今まで通りの先輩でいてください、嶺二先輩!』


最後は笑顔で、下の名前を呼んだ


ありのままの気持ちを伝えたいから



「…もう、しょうがないな春歌ちゃんは。」


握られていた片方の手がするりと抜ける


「わかったよ
僕も今まで通り、君と向き合いたい。
1人の君の先輩として」



いつもの手つきでいつもの温かさで
嶺二先輩が頭を撫でてくれた


いつもと違うのは、悲しそうで、光がない先輩の瞳


「それじゃ、僕はもうお邪魔だろうしもう行くね」


あ、いつもの嶺二先輩だ
よかった…


『はいっ
本当にありがとうございました。』


おもいっきり頭を下げる



そのときもう一度、
嶺二先輩が私の頭にぽんっと手をのせた


笑顔を返すと


顔がちょっと赤くなって


何かをこらえるような笑顔を向けられた


嶺二先輩は去り際に
美風先輩の耳元で何かを伝えた



「後輩ちゃんを泣かせたら許さないから」


わたしにはよく聞こえなかった

「わかってる」


なにがわかったんだろう…?


美風先輩のたった一言は
気持ちがこもっていたと、私はそう思った



美風先輩の返答を聞いた嶺二先輩は
満足そうに去って行った


それを確認した美風先輩は私を引き寄せる


「春歌…」


ぎゅっと抱きしめられる


「ボクを、ボクを選んでくれてありがとう」


逃がさないように、離さないように…
  優しく包み込まれる



『美風先輩…
わたしもすっごくすっごく嬉しいです』


抱きしめあうと
やっぱり美風先輩はロボじゃないって思った


こんなに温かいんだもん


ロボだなんて思えない



「春歌。
ボクのことは好きに呼んでいいよ」


『いいんですか…?』


「当然でしょ。
あと、二人でいるときは敬語も控えめに。
ボクにはよくわからないけど、恋人ってそういうものらしいし」


 嬉しい…な


『うん、一緒に本当の恋を見つけましょうね
藍ちゃん』


笑いかけたら
藍ちゃんも笑い返してくれた


「約束…だよ?」


小指がだされる


『うん!大好きだよ、藍ちゃん』


藍ちゃんの小指に私の小指を絡める


「ボクも…
愛してるよ、名無し」



こんな素敵な毎日がずっとずっと続けばいいな

そう願いながら


どちらともなくキスをした



――きらめく夜空の下で
  大好きな君と最高のkissを……





*嶺二side




よかった…
ミッション成功!


よし、泣かなかった


強がっちゃったけど
ほんとはやっぱりつらかった


そっか、なんとなくわかってたけど


本人の口から聞くと
なんだか苦しいなあ



でもこれも名無しちゃんのためだから…

しょうがないんだよね


アイアイなら安心して任せられるし


これでよかったのかもしれない


そうは言いながら
やっぱり、胸が苦しかった



我慢していた涙が一気に込み上げてくる



涙でぼやける視界の中



キラキラ光る夜空の星に



君の幸せを願った










どうかお幸せに…


――大好きな君が



幸せでありますように



(この涙がうれし泣きで流れたものだったなら

どんなに嬉しかったのだろう)

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