*main うたプリ

□あいはすぐそこに
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走る。
ただただがむしゃらに 走る。

こんなに走ったのは久しぶりかもしれない


だけどしょうがない
今日は待ちに待った恋人との
藍ちゃんとの――


『藍ちゃん、おまたせっ! 遅れてごめんね』


   デートだから


「遅いよ、何分遅刻してるとおもってるの」

 待ってないよ、なんて人間じゃないから言ったりはしない

でもそれをわたしは悲しいとは思わない


藍ちゃんが素直に注意してくれる

それは藍ちゃんにしかできないこと
それに一つ一つの言葉に愛があるって、そう思えるから



「ねえ、僕の話聞いてるの?」

息が絶えない私を藍ちゃんの、きれいな瞳で覗き込む


『…! ご、ごめんなさい』

 いきなり見つめられてドキリとする

私は目を合わせないように、そっとうつむいた



「別に怒ってるわけじゃないんだけど。
ちょっと遅れたから、何かあったのかって心配しただけ」

ぽんっ と藍ちゃんの手が私の頭にのせられた

かと思うと、いきなり藍ちゃんの顔が近くなる



「あんまり…心配かけさせないでよね」


そう、耳元で囁かれた

途端に私の耳に息がかかる
それだけで、あまり経験のない私はドキドキしてしまう



『わかった// 気を付けるね』

きっと今の私の顔、相当真っ赤だろうな……

そんなことを考えていると



「ほら、行くよ。今日はカフェでゆっくりするんでしょ」

ぎゅっと手を握られた



『うんっ!前言ってたシュークリーム、食べよ?』

握られた手を、藍ちゃんに気ずかれない程度に握り返した



「わかってる」

振り向いて優しく微笑まれた




しばらくして
藍ちゃんがぽつりと何かを呟いた気がした

「……わかってるよ。
食べに行く約束も、春歌が手を握り返したことも」



私はうまく聞き取れず

『? 藍ちゃん、何ていったの?』

覗き込んで聞いてみる



藍ちゃんと目がばっちり合ったけど
照れたように目をそらされた

「なんでもないよ」






   私の目に映るのは




    照れた顔の



    愛しき彼と




 その先に見える カフェの看板






      幸せは



 
いつも私の   すぐそこに…

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