過去夢@

□白夜光 08
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『じゃあ、どうしてライトは?ライトもみんなと同じヴァンパイアなんですよね?』


ライトもヴァンパイアなら、お母さんの死にそれほどショックを受けたりしないはず


「ああ、それは間違いない。だけど、ライトだけはなぜか…人間のように繊細な心を持って生まれてきた。だから昔のアイツは餌だろうが何だろうが、誰かを傷つけることを特に嫌っていた。
俺たちの種族の中には、極まれにそういうやつもいるんだよ。でも……それはヴァンパイアとして致命的なことだ」


さっきも言ってた。ヴァンパイアは、人を傷つけなければ生きていけないって……

少し言いにくそうに、シュウさんは話を続けた


「……なぁユイ、不謹慎かもしれねーけど、俺はあいつが変わっちまった時、正直ホッとしたんだ。
これはあいつがこれからヴァンパイアとして生きる為に、必然な事だとも思った。もしあのまま繊細な心を持ち続けていたら、あいつは今頃……」

さっき、レイジさんに言われた話を思い出した

「自分が死ぬ為」の毒薬を求めていたって……

たぶん、ライトがそのままの心を持ち続けていたら、単に人から血を飲めないとかだけじゃなくて


きっとお母さんの死も、ヴァンパイアとしての宿命も受け入れられずに、自ら死を選んでいたのかもしれない

ライトは自分を守る為、自分が生きる為に、自ら心を押し殺して、偽りの自分を創りだしたんだろう

そのおかげで今ライトは、ヴァンパイアとして生きていられるんだ


「……それとな、恐らくお前に対してライトが急に優しくなったりしたのは、ずっと隠してたアイツの本性が、無意識に出てきちまったからだろう。
今まで押し殺してた心が突然現れて、アイツ自身もうまく受け止められなかった。
だから混乱して、そんな死んだような目をしたり、行動と言動がバラバラになったりしたんじゃないか?」


ライトは、押し殺してた本当の自分と、演じてきた偽りの自分の間で、不安定に揺れていた

そんな感じだったとしたら、これまでの彼の行動にも納得がいく


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



正直、すごくショックだった

ライトの過去の話ももちろんそうだけれど

自分のしてきたことが、間違っていたのかもしれないって思ったから。


これまで私は、「ライトの事が知りたい」っていう自分の感情のままに彼の過去を追っていたけれど

それは彼の心の傷をえぐり出して

ヴァンパイアとして生き続けるのを妨げるようなことだったなんて。


過去を知ったところで、心の傷を癒せるわけでもない

ライトの本性が出たところで、ライトが苦しむだけ


『シュウさん……わたし、これからどうすればいいんでしょう?』

「……俺に聞くな。俺は過去にあったことを話すだけで、未来はお前たちの問題だ。自分で決めろ」

『そう……ですよね』


ライトの過去と本性を知ってしまった今

私には何ができるんだろう?

私といたら、ライトは過去を思い出したり、必死に隠していた本性を出してしまう

そしてそれに苦しんでいる


もしかしたら私は、何もしちゃいけないのかな……
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