過去御礼SS

□スバルとテディの長い1日 E
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『チッ…作りすぎたか……』


腹が減っていた俺はホットケーキを焼いたんだが、料理なんて久しぶりで分量が分からず、大量に焼けちまった。
数えてみたら10枚もある。あいにく俺は小食で、こんなに食えるはずがない。


とりあえず3枚を皿に盛って、ハチミツをかけた。


(まぁ、なかなか美味そうにできたな)


右手に皿、左手にクマを持って席に着いた


(コイツ、どこに置こうか?)


机に置くとまた誰かに見つかってややこしいことになりかねない

かといって床に置くと汚れてカナトがうるさいだろうし


俺はしばらく考えて


『……ここしか、ねーよな……』



不本意ながら、クマを自分の膝の上に置くことにした


他の奴に見つかりにくくて、尚且つすぐ手が届いて安全な場所…となると、ここしか思いつかなかったんだ


『……仕方ねーんだよ、これは。別に好きでやってるわけじゃねぇ。そうだ、うん……』


自分に言い聞かせるように、長々と独り言を言ってしまった


『よし、食うか』


俺はようやくホットケーキを口にした


(うん、なかなか美味い)


俺って結構料理の才能があるのかもしれないな

今度レイジに他の料理も教わってみるか



しかし、すばらくすると



『……ウプ』


ホットケーキは見た目の割に腹にたまる


ハチミツの甘さも加わって2枚で腹一杯になってしまった


皿にはあと1枚あるし、キッチンのフライパンの上にはあと7枚も残ってるっつーのに


どうしようかと俯いたら、膝の上のクマが目に入った


『……お前もコレ喰えたらいいのにな。結構うまいぞ?』


この美味さを誰とも共有できないのが悔しくて、つい話しかけてしまった


(きっとこいつも、甘いものとか好きだろうな……)



なんだか、久しぶりに心安らぐ時間だ


ホットケーキが美味いせいか?それとも

このクマのせいか?


そんなことを考えていた



その時




「ブッ!!ククククク……」


背後から誰かの笑い声が聞こえた


『!…誰だ!?』


振り返るとそこにいたのは



「ブハッ!!ハハハハハッ!!」


『アヤトか……』



いつの間にかアヤトが俺の背後で、腹を抱えて笑っていた


『お前、いつからそこに居たんだよ!?』


「ヒヒッ!お、お前が…そのクマを…ひっ膝に…ブクク…乗せたところからだよ…ブハハハッ!!」



『……クソッ!』


一番見られたくないところから見られちまったらしい


『おいアヤト、いつまでも笑ってんじゃねーよ!』


「だ、だっておま…クマに向かって結構うまいぞ?≠チて…ブハッ…だ、ダメだ俺、ちょっと出直してくる。
メシ食おうと思ったけど…クククッ…わ、笑い止まんねーや、ブハハハハッ……」


アヤトは呼吸困難でも起こしそうなくらい爆笑しながら、キッチンを出る



『ちょっ!まてアヤトっ!!』


俺が事の成り行きを説明する間もなく、アヤトの姿は見えなくなってしまった





・・・・・・・・・・・・・・



俺がテディを持っているってのは、相当おかしい事みたいだ


シュウには変な趣味だと思われ

レイジには病んでると思われ

アヤトには爆笑された



『………んだよ。別に、話しかけたっていいじゃねーか』


初めはカナトもライトも、こんなぬいぐるみに話しかけるなんておかしいと思ってた


けど俺は今、こいつをただのぬいぐるみだとは思っていない




ホコリまみれの床に落ちていた時の悲しそうな顔

ライトに絡まれていた時の迷惑そうな顔

俺が話しかけた時の嬉しそうな顔


俺には、テディの表情が分かる気がするんだ




それに、ずっと腕に抱いていたせいか


コイツが傍に居ないと、何だか落ち着かない



(この気持ちは……一体なんだろう?)



問い掛けるように、膝に乗るテディの顔を見た



『でも、今日1日だけ……だもんな』



そうだ、俺がどんな気持ちを抱こうと


こいつはカナトのもんだ


カナトが帰って来たら、もう俺とは……







つづく


スバルくん崩壊しますたヽ(^o^)丿

ちなみにスバル君はテディに対して愛情がある時のみテディ≠ニ呼びます

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