過去夢@
□白夜光 02
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「オハヨーユイちゃん♪」
夕日をバックに「おはよう」と言われるのはまだ慣れない
でも夜間学校に通っている私たちは夜型の生活なのだ
夕方に目を覚まして学校へ行き、朝方帰ってくる
夕食が朝食のようなもので、夕方の挨拶が「おはよう」なのだ
思えば、兄弟の中で私に挨拶してくれるのはライトくらいだ
レイジさんはこちらが言えば返してくれるけれど、他は無視されるか難癖をつけられる
「昨日は楽しかったねぇ〜。でもユイちゃんが死んでなくて良かったよ。2度と君の血が吸えなくなったら困るもんねぇ。あっユイちゃんあのカケ覚えてる?
僕が果てるのとユイちゃんが失血死するのとどっちが早いかって…。アレは君の勝ちってわけだ!勝ったご褒美に今度はも〜っと血を吸ってあげるね。フフフ」
『あのっ…き、昨日 あの後…』
「ん?あぁユイちゃんが気絶した後?もちろんた〜っぷり体中舐めて、血を吸ってあげたよ。嬉しい?」
『いや、そうじゃなくて…昨日、私気付いたらベッドの中にいたんだけど。誰が運んでくれたのかなって』
「…あっそう。僕は君の身体を堪能したらそのまま部屋に戻ったから、その後の事は知らないよ。メイドの誰かが君をあわれんで部屋まで運んでくれたんじゃない?あんな姿ではしたなく足を開いたままだったら、他の奴らに犯されちゃってたかもしれないからねぇ。よかったねユイちゃん♪」
ウソだ 彼はウソをついている
私を運んだのは誰だか分からないけれど、あの後彼は確実に私の部屋へ来た
だから知らないはずがない
『そっか…』
でも、それを口にすることはできなかった
あの時の彼の悲しそうな顔 優しい手
彼の心の奥の 触れてはいけない部分に触れてしまいそうで恐かった
「ところでユイちゃん、時間大丈夫?もう学校行く時間なんじゃない?それとも僕と一緒で停学処分受けたの?」
ハッ!!やばい!!
窓の外を見るともう迎えのリムジンが来ていて、アヤト達が乗り込んでいる
急がなくてはおいて行かれる
『あっじゃ、じゃあ…キャッ!!』
走ろうとした瞬間、貧血気味のせいか足元がふらつき転びそうになった
もうだめだ…!!
「おっっと!危なっかしいなぁユイちゃんは。こ〜んな隙だらけだから、いろんな人にすーぐ血を吸われちゃうんだよ?ビッチちゃん♪」
間一髪でライトの片腕が私を支えた
お礼を言おうと思ったが
昨日の吸血以来はじめてのあの忌々しい呼び名を耳元でささやかれ、その気は失せた
それでも華奢なように見えてたくましい腕と、彼の香りに顔が熱くなる
「いってらっしゃい♪ んっ…」
そのまま耳たぶをペロッと舐められた
『いやっ!ちょっと!』
これ以上ここにいるのはマズイ
いろんな意味でふらつきながらも私は彼から離れ
皆が待つリムジンへと走った
「おせーぞユイ!」
『ごめんアヤト…。その、ライトが…』
「あ?ライトの奴、起きてんのか。めずらしーな」
『え、いつもは寝てるの?』
怒り気味のアヤトと話していると、隣にいたカナトまでもが不機嫌そうに会話に入ってきた
「学校へ行く必要もないのに、僕らと同じ時間に起きてくる理由なんてないでしょう。そんなことも分からないんですか?」
『た、確かに』
「僕だって学校が無ければ1日中テディと遊んでますよ」
確かに私も夏休みとかは平日でも昼まで寝てたもんなぁ
そういえば、いつもライトに会うのは学校から帰った後だった
じゃあ何で今日は早起きしてるんだろう?
もしかして、私を心配してくれた…とか?
いや、まさかね
結局今日もビッチとか言われたし
「俺様だったらとりあえずクタクタになるまでバスケやって〜それからゲームやって〜」
「いつもと変わらないじゃないですか」
「うっせ!カナトに言われたくねぇよ!」
どうやらアヤトの怒りの矛先は私からカナトに移ってくれたようだ
いつもと変わらない二人を横目にしながら
その時私はまだ気づいていなかった
そんなやりとりをしている私達の乗ったリムジンを
ライトが屋敷の中からじっと見つめていたことを…
つづく
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