過去夢@

□隠し味
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再び吸血が始まる


ゴク…ゴク…


レイジさんは指を私の口に突っ込んだまま

喉を鳴らして血を飲んでいる


『ム………んんっ…』


指のおかげで声は響かなくなったけど

歯を食いしばることができなくて苦しい

そんな私の様子に気づいたのか、レイジさんが顔を上げた


「……指、噛んでも構いませんよ」


その声は、聞いたことないくらい甘く優しくて

つい甘えてしまいそうになったけど


『……んんん…』


さすがにそれは拒否した


当たり前だけど、噛まれるのってすごく痛い

それは私が一番知ってるから


・・・・・・・・・・・・・



いつの間にか私の目から涙がこぼれていた


『んっ…クッ…ヒック…』


痛み、快感、羞恥、吐気

全てに耐えているはずだけど


もうどれが一番苦しいのか、流れる涙がどの所為なのか

分からなくなっていた



レイジさんが、涙でグシャグシャになった私の顔を覗くと


「……あなたはどこまで馬鹿なんですか?こんな酷い事をされているのに……」


『……ングッ!』


口の中にあった指が、私の舌を挟んで引っ張った


『…ンンッ!!』


予想外の行動に驚いて、ついにレイジさんの指を思いっきり噛んでしまった


(しまった!!)


それに動揺して顔を動かした時


ポタッ


今度は首から垂れた血が数滴、スープの鍋に入ってしまった


(あっ!どうしよう…)


レイジさんも気づいたはずなのに、鍋にも指の痛みにも構うことなく


私を引き寄せて吸血を続け


「……んっ……ジュ…ジュルッ…」


私はもう、噛むのを我慢する余裕さえなくなっていた


『んっ…ングッ…』



・・・・・・・・・・・・・



私が意識を失う寸前で、吸血は終わった



『…っ!…ハァ……ハァ……』


「………」



私が息を整えている間も、倒れないようにずっと抱き締めてくれていたレイジさん


その腕の中は想像以上に暖かくて


彼が優しいのか恐いのか、ますます分からなくなった





私の呼吸が整うと、何事もなかったように再開された食事の準備


『あ…このスープ、作り直しますか?』


「いえ、このまま出してください」


『でも……』


こんなにマズイの、みんなに飲ませられない


「他の兄弟達はしょせん血の味くらいしか分からない馬鹿舌ですから。料理の味など、どうでもいいんです」


『え?じゃあどうして……』


(どうしてあんなに怒って、罰とか……)



「それより涙を拭きなさい。その顔だと、必死に声を我慢したのが無駄になります」


ハンカチを差し出された


『あ……ありがとう…ございます』
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