第5章 (‘元’含む)魔法少女in地球

□太陽系へB
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リンディ・ハラオウンが嶋津冴子の出自に頭を悩ませていた頃、当の本人は──。

『─ぶしっ!!…へぶし!』
「噂の的にされてますね、艦長」
「どうせ悪口か敵兵の怨嗟だろうよ。でなきゃ、鬼竜(土方)のぼやきの肴になってるかだ」

『白根』艦橋で盛大にくしゃみをかます冴子と、副長の松島が軽口を叩き合っていた。

第13戦隊は太陽系に進入し、既にタイタンへの規定航路に乗っていた。
途中、『ゆきかぜ』が眠るエンケラドゥスに立ち寄るので、タイタン基地までは約7時間だが、この辺りは2年前に沖田十三率いる国連宇宙海軍第2艦隊とガミラス艦隊が干戈を交えた宙域だ。

『ヤマト』の帰還後にサルベージが実施され、撃沈された艦の残骸は回収が進められたが、小さな残骸が艦と衝突・接触する事は時々起きた。
果たせるかな──。

『砲身に何か引っ掛かった模様。確認します』

第1主砲塔から連絡が入った。
砲身やアンテナ等に何か引っ掛かかった場合は、戦闘中でない限り直ちに除去しなければならない。
すぐさま甲板科員が確認と除去に向かったが、数分後、甲板科を取りまとめる掌帆長から入った報告に、冴子達は表情を曇らせた。

『引っ掛かっていたのは〈ゆきかぜ〉乗組員の上半身でした。収容します』
「了解、医療科に引き渡してくれ」

2年以上宇宙空間を漂っていた『ゆきかぜ』乗組員の亡骸が偶然にも『白根』に接触し、収容されたのだ。
ガミラスやガトランティス兵の場合は宇宙葬に付すが、友軍兵の遺体はたとえ一部でも地球に連れ帰り、家族に引き渡すか、故郷の地に葬るようにしている。
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