第3章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)

□慌ただしき出撃A
2ページ/2ページ


――地球・新横須賀市――

『‥‥地球は未だ復興の途上にありますが、それを考慮しても、私達の大恩人たるイスカンダルを見捨てる事はできません‥‥』

高町雪菜は自宅(嶋津宅)と同じフロアの中島家のキッチンで、夕食の支度を手伝いながら、ラジオから流れる連邦大統領の緊急会見を聴いていた。

中島家の主である龍平は、軍務局第2課長代理のポストにいる“背広組”の1人。
嶋津冴子や真田志郎らが訓練生当時、訓練学校の事務長代理で、その時からの付き合いだ。

雪菜の生家である旧“翠屋”にも足しげく通っていたのだが、その時に見初めたアルバイト店員が、当時留学生だった今の真理亜夫人という縁もあってか、ガミラス戦の末期、戦争孤児になった雪菜を、とかく私生活ではボケナスである嶋津冴子の元に、被保護者兼ツッコミとして送り込んだのも彼だ。

一般的には中央の背広組と、冴子達のような“制服組”は仲が悪いのだが、中島には悪い意味でのエリート臭がないため、制服組からの評判も悪くないのだ。

そして、彼の夫人である真理亜は日仏ハーフだが、冴子や真田は、

『存命者中最強の台所の魔術師!』

と評しているが、雪菜もまたこの真理亜評には異存がない。
何しろ、

『この人の手にかかると、大豆グルテンの代用肉が但馬牛の霜降りになる!』

とさえ言われる腕前を何度となく目の当たりにしているのだから、“翠屋”再興を志す雪菜にとってはまさに良き師匠である。

「真理亜さん、味見をお願いできますか?」

シチューソースをひとまず納得できる味に仕上げた雪菜は、小皿にすくって右隣の真理亜に手渡す。
真理亜は口にするや、

「‥‥心持ち黒胡椒を効かせるといいかな?」

と評した。

――最後の仕上げは真理亜自身で行ったが、雪菜がそれを無視するはずがなかった。

こればかりは魔法でもどうにもならない。
翠屋再建に向けた雪菜の修業は、まだ序盤に過ぎないのだ。


――太陽系北極外縁部――

「太陽系を離脱しました!」

『ヤマト』艦橋で太田健二郎が報告する。

「『白根』から通信!『艦首92度下ゲ。外宇宙巡航速度デばらん星二向カウ、です!」

3艦はバラン星を中間点にして大マゼラン銀河に向かうルートをとった。
これからワープを繰り返し、1日1万光年以上の行程をこなさなければならない。

各艦では機関長指揮の元で主機関の調整を行っていたが、それもひとまず終了した。

――『白根』――

「艦長、全艦の機関チェック完了。異常ありません」「よし、予定どおり30分後に最初の長距離ワープを行う」

3艦とも動力部は問題ない。これからしばらくはワープに明け暮れる毎日になるが、訓練も欠かす事はできない。
だからこそ、1日あたりの移動距離を稼ぐ必要があるのだ。

(とはいえ、大マゼラン銀河まで予定どおり進むかな‥‥?)

予定はあくまで予定だ。現実が期待どおりに推移するとは限らない。
というか、大抵はハプニングやアクシデントに見舞われてばかりだ。

冴子の懸念はまたも的中することになるが、それは少し後の事だ。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ