第3章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)

□長征へ
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 ――第27管理世界『ファンデンブルグ』・首都次元港――


「ようこそ、『レオニダス』へ。艦長のエルス・ラビン一等海佐だ」
「執務官のフェイト・T・ハラオウンです。道中お世話になります」
「執務官補のシャリオ・フィリーニです。よろしくお願い致します」
「同じく、ティアナ・ランスターです」

艦長と、執務官・執務官補の3人は互いに名乗り合い、敬礼を交わす。

――『クラウディア』はエネミーA(白色彗星帝国軍)の艦船の残骸等を回収して本局に持ち帰ったが、その直後、フェイトチームに人体実験の捜査・摘発命令が下った。

フェイトはシャリオ・ティアナを伴って第27管理世界に赴き、現地地上部隊の支援を得て捜査に乗り出した。

実験素材になっていた子供達が証拠隠滅のため“処分”される危険があるため、迅速かつ慎重に捜査を進め、一昨日の早朝に強制捜査に踏み込んで犯人を全員拘束した。
しかし、実験材料にされていた子供達の一部は既に手の施しようがなかった――。

比較的容態が軽い子供3人は本局に移送して治療することにし、寄港した『レオニダス』に子供達共々便乗して帰ることになった次第だ。

因みに、本局までは3〜4日の行程だ。


「後味が悪い事件ですね‥‥」
「そうだね‥‥」


――『レオニダス』が巡航に移ったのを確認し、フェイトたちは子供達の様子を確認したが、3人ともPTSDの症状が出ており、まずメンタルヘルスを我慢強く行わなければならない。

子供達を全員救い出したかったのだが、4人は結局死亡。生存した6人中3人は廃人同然だった。

さらに彼女達の表情を浮かないものにしているのは本局のクロノからの報告。

この一件には本局高官も絡んでいるとの情報があり、警防部が重要参考人である佐官に任意での事情聴取を求めたところ、翌日、服毒自殺した状態で発見されたため、本局内部の調査はデッドロックに乗り上げてしまったのだ。

「やりきれないですね‥‥」
「うん‥‥」

ティアナが憤懣とやりきれなさをないまぜにした表情で呟き、フェイトも哀しげな表情で返す。

執務官としてのフェイトは次元犯罪の捜査に実績を収めているが、同時に人身売買等、子供が巻き込まれた犯罪にも対峙する事が多い。

それは自らの生い立ちが関係しているが、執務官として数々の犯罪に対峙したところ、子供心に植え付けられた大人への不信や憎しみが、往々にして犯罪の遠因になった実例を目にしているからこそ、子供を餌食にする者に対しては並々ならぬ憤りを向ける。

故に、今回の事件で子供達が犠牲になっていた事は、フェイトにとって痛恨事だった。
もっと早く摘発できていれば――という思いを消せずにいた。

しかし、今は生きている子供達の事を考えなければならない。
事件解決もさりながら、子供達の心の再建は時間がかかるのだから――。
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