第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)
□主砲全開!目標ヤマト‥‥‥‥マジ?A
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『ヤマト』は『アンドロメダ』の艦橋直前を直進。やや経ってから『白根』も『アンドロメダ』の艦底を通過した。
『アンドロメダ』に動きはない。
「『アンドロメダ』に動きは!?」
「ありません!攻撃命令もありません!」
冴子の問いに、観測員と通信長が応じた。
『ヤマト』は直進のまま遠ざかっていく。
『‥‥‥‥』
“!‥‥やはり、そういうことか。土方さん――。”
土方の真意を再認識し、冴子は表情を緩めた。
「減速しろ。面舵いっぱい。『アンドロメダ』の横につける」
「了解しました。おもーかーじ!」
近藤の復唱を受け、ブリッジクルーの間にホッとした空気が流れる。
――『アンドロメダ』艦橋――
艦橋の直前すれすれを『ヤマト』が通過。続いて艦底ぎりぎりを『白根』が通過した時、艦橋の緊張感はピークに達した。
若いクルーは顔色を失い、両腕を震わせている。
『ヤマト』はそのまま遠ざかっていく。
艦底を通過した『白根』は、暫く『ヤマト』を追尾していたが、やがて減速して右に艦首を転じた。
その様を見た副官は舌打ちして追撃を命じる。
「嶋津の奴、勝手な真似を‥‥!面舵90!追撃――」
「待て!!」
皆まで言わせることなく土方が制した。
「しかし!司令‥‥!」
なおも言い募る副官だが、土方は頑として突っぱねた。
「もういい、行かせてやれ。
‥‥責任は私が取る。いいな!?」
否を言わせぬ断固たる口調で言い切った。
沖田、さすがはお前の子供たちだな。と心中で続けながら――。
その後、土方は参謀本部に『ヤマト発見ニ至ラズ』と打電。続いて個人名で『ヤマト』に激励電を打った。
これにて一件落着、めでたしめでたし!
――などと終わらせるほど、土方は甘い人物ではなかった。
『アンドロメダ』と『白根』が小惑星帯に戻るや、
「これより『アンドロメダ』と『白根』で模擬戦3本勝負を行う」
と言い出した。
しかも、
「諸君、喜べ。私自ら教導してやるからな」
とても、とても有難いお言葉つきで。
『ぬわんですと――!!?』
『ぎゃ――!!』
土方の苛烈な教導を知る者は皆、心の中で絶叫した。
――この模擬戦とその結果、『アンドロメダ』『白根』両艦のクルーがどんな目に遭ったのか、関係者の口は堅く、詳しい事は未だ判明していない。
当時『白根』の艦長だった某将官は
「あれは『アステロイドベルトの悪夢』だ。
それ以上でも以下でもない」
と、一言だけ口にしたという――。