第5章 (‘元’含む)魔法少女in地球

□懸念と謎
1ページ/2ページ

ミッドチルダに帰還した高町なのはは、聖王教会本部に移送されて療養生活を送っていた。

一人娘の身の周りの事を含めれば妥当な選択だが、なのはが“入手”した情報があまりに重大であるため、その管理を含めての事だ。

なのはの元には週に数回、管理局の情報士官らが来ては、彼女自身の話やレイジングハートからのデータ抽出により、宇宙戦艦ヤマトを始めとする地球防衛軍や地球連邦・ガトランティス・ガミラス残党・暗黒星団帝国等の情報が明らかになった。

レイジングハートについては本局でのメンテナンスを兼ねて別個の情報抽出も考えられていたが、当のレイジングハートはそれを拒絶。

結局、知己があるシャリオ・フィニーノかマリエル・アテンザが教会本部に赴いてデータを抽出した。

──なのはとレイジングハート、高町ヴィヴィオ、コロナ・ティミルらからの聴取やレイジングハートからのデータによってもたらされた情報は、時空管理局の上層部を震撼させるのに十分過ぎた。

“こんな常軌を逸した世界があるのか?”
“こんな戦争中毒者や狂戦士どもと、どう付き合えというのだ!?”

高官の多くはこのような感想を持った。
狂戦士とは地球防衛軍、戦争中毒者とはそれ以外の勢力の事だ。
だが──。

『理解できぬからといって耳目を閉ざしては、盲目も当然じゃ』
『我が局員や無辜の市民が、ガトランティスの手にかかった事実は消せません。事実から目を背けていては、数多の悲劇が再生産されますよ』

管理局のトップに立つ『伝説の三提督』が高官達を嗜める。

「少なくとも、地球連邦と地球防衛軍は戦争状態にない限りは穏健で、交渉も可能な相手であるのは、これまでのやりとりや高町一尉らの話や、クライド・ハラオウンを救出・保護してくれている事実が証明しています。フェイト・テスタロッサ執務官も現地に向かっておりますし、地球連邦とは継続的な交流が可能ではないでしょうか?」

レティ・ロウランが地球連邦との継続的な交流を提案するが

「しかし、彼らは魔法の存在を知ってしまったし、旧式艦とはいえ『エスティア』を回収し分析しています。このまま放置してよろしいのですか?」

次元世界積極拡張派に属する佐官が警鐘を鳴らした。
彼の言は誤りではない。
管理局は、非魔法文化の世界(惑星)に対しては基本的に不干渉だが、魔法や管理局の存在を知った場合は、次元移動等、高度な技術の提供と引き換えに管理世界に組み入れてきた。

時には武力を用いた事もあったが、そういう世界は今なお管理局に批判的な者が多く、人心の掌握に苦慮しているのだ。
しかし──。

「地球連邦を管理世界にするのですか?我々の艦を容易く撃破したガトランティスの1個艦隊を一撃で葬った波動砲を持つ戦闘艦を100隻以上持ち、同胞を守るためなら狂戦士になるのも厭わない地球防衛軍の兵士達と、殺し殺される覚悟を迫られた経験がない管理局員がまともに戦えるとお思いですか?」

レティが強い口調で諌めると、強硬派といわれる高官たちも黙らざるを得ない。

『地球連邦については、ハラオウン執務官とクライドの帰還を待ってからでもよかろう。我々は彼らの事をまだ知らなすぎる』

『三提督』の一人、ラルゴ・キール元帥がひとまず議論をまとめた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ