第5章 (‘元’含む)魔法少女in地球

□走る金鳥じゃなくて緊張
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嶋津冴子率いる独立第13戦隊は、ワープと訓練を重ねながら天の川銀河外縁部に到達。太陽系まで約3日の宙域を亜光速で航行中であった。

── 旗艦『白根』艦長室 ──

大型戦闘艦にカテゴライズされる『白根』の艦長室は、応接室を兼ねた執務室と居室に分かれている。
これは本艦と2番艦『大雪』が『ドレッドノート』級主力戦艦と同等の旗艦機能を有するためで、事実、先日のガトランティス帝国首都攻防戦では落伍した『アンドロメダ』から土方司令長官が移乗し指揮を執ったことで有効性を実証したが、今は僅か3隻の小部隊旗艦に戻っていた。

「宇宙は事もなし。とりあへず半径3光分は、か‥‥」

部隊の長である嶋津冴子は艦長執務室に引き上げて航海日誌を作成中である。
小規模とはいえ複数艦からなる部隊のトップゆえ、『ヤマト』『水無瀬』からの日誌にも目を通し、必要ならば内容について確認しなければならない。

「‥‥‥‥」

冴子にとって目下の関心事は、往復30万光年を超える事が確実な今次航海における各艦と乗組員の消耗だ。
『ヤマト』『白根』は長期間行動を念頭にした設備だから良いが、『水無瀬』は太陽系から近隣恒星系にかけてが本来の運用範囲であるため、相対的な居住性では劣る。

このため、時々『ヤマト』『白根』に接舷してレクリェーション施設を開放したが、根本的な解決方法とは言い難く、乗組員の消耗は『水無瀬』が一番深刻だ。

(なし崩しに出撃したからそれも無理からぬ事だな。幹部達がよく目配りしていたからだろうし、ルーキー達も頑張ってくれたからだが‥‥)

現行の地球艦隊はかつての連合艦隊と同様、いわば『近海邀撃艦隊』であって、ガミラスやガトランティスのような『遠洋艦隊』ではない。

彼らとは違い、侵略ではなく防衛のための力だから仕方ないのだろうが、連邦政府の長期計画である外・深宇宙への版図拡大──もちろん平和的に──には、少なくとも『白根』級並みの居住性を持つ艦船が必要だろう。

居住性の向上については、ガミラスに加えてガトランティスや時空管理局艦船という、長期間行動に適した艦船の実物が手に入ったので、今後のフィードバックに期待といったところだ。

それはさておき、太陽系に近付いているせいか、艦内の雰囲気が上向いている。
それ自体は悪い事ではないが、浮わついてしまっては困る。

『百里の道を行く時は九十九里をもって半ばとせよ』

かつての覇者の格言というが、まさにそのとおりだ。
ましてや太陽系やその周辺にはガトランティス帝国軍の残党が潜伏しているのだ。
ましてやこちらには徹底抗戦の象徴たる『ヤマト』がおり、この『白根』は臨時旗艦として戦った。
ガトランティス残党とすれば恨み骨髄だろう。

抜き打ち訓練をやるべきか‥‥。

そんな考えが脳裏をよぎった時、ブリッジからの呼び出しアラームが鳴った。
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