第5章 (‘元’含む)魔法少女in地球

□とある掃討戦
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――アンドロメダ銀河全域を征服したガトランティス帝国は新たな征服先を天の川銀河に定め、最初に同銀河オリオン腕辺境部のとある恒星系の攻略に取り掛かったのだが、その恒星系で彼ら――ガトランティス帝国元首ズォーダー5世大帝と側近達――の殆どが斃れた。

2211-12年、ガルマン・ガミラス帝国軍によるアンドロメダ銀河への強行偵察の結果、同銀河の大半はなおもガトランティス帝国の支配下にあるが、帝国が駆逐された恒星系や星域も存在しており、ガトランティス帝国にはズォーダーほどの力量を持つ指導者が出ておらず、アンドロメダ銀河の支配すら覚束なくなっていると判断された。

ズォーダー5世は紛れもなく傑出した君主で、アンドロメダ銀河を完全征服したのも彼の強力かつ的確な指導のなせるところであったと思われるが、ズォーダーが強大な存在であったがゆえに、側近はイエスマン化。
結果として、太陽系攻略作戦で地球側の苛烈な抵抗により手持ち戦力が壊滅するとその矛盾が一気に噴出。
ズォーダー自身が行った側近大粛清も遅きに失し、遂には彼自身の身を滅ぼす事になったが、死の使いとなって現れたテレサと対峙してもなお、ズォーダーは銀河の覇者としての矜持を保っていた。

大帝ズォーダーの死に衝撃を受けた太陽系内のガトランティス帝国軍の大半は、首脳部で唯一生存したラーゼラー支配庁長官に率いられて太陽系並びに近隣恒星系から退去。そのままアンドロメダ銀河方面に向かったものと思われるが、ズォーダーの復仇と地球への復讐を叫ぶ一部過激分子は太陽系内に潜伏。外惑星基地に散発的な攻撃を行うものもいるため、地球防衛軍は戦力がある程度回復した段階で残党を一気に殲滅する方針であるが、散発的な戦闘は既に始まっていた。


  ――外周小惑星帯付近――

残骸と化したガトランティス駆逐艦と輸送艦の傍らには2隻の地球防衛軍巡洋艦が遊弋していた。

  ――巡洋艦『伊吹』艦橋――

「敵艦からの発信は確認されません」
「‥‥うん」

通信士からの報告に、艦長席の男が頷いた。
制帽の下にある顔は誰が見ても青年としか思えない。
「補給艦まで伴っていたのは予想外でしたが、少しは彼らを締め上げる事になりそうです」

操舵席から報告するのは妙齢の女性士官、綾歌麗奈少佐。
『伊吹』の副長兼航海長だ。

「音を上げてとっとと(太陽系から)出てってくれればもっけの幸いだが‥‥そうもいかないだろうな」

艦長席の塩江龍一中佐は軽い溜め息をつきながら、手にしたタンブラーを口許に持っていく。

「『鳥海』も異状なしです!」
「よし。直ちにこの場を離れるぞ」
「わかりました」

彼ら――『伊吹』『鳥海』――は情報部からもたらされたガトランティス残党の移動経路上で付近で艦体に小惑星を付着させた“アステロイドシップ”形態で待ち伏せ、通りかかった輸送艦と駆逐艦を砲撃し、緊急電を打つ暇すら与えず屠り去ったのだ。

内惑星(太陽〜土星圏)域の航行は安全宣言が出されたが、それ以遠の宙域にはガトランティス軍残党が出没し、監視衛星を破壊したり、輸送船や護衛艦に接近したり離れたりの嫌がらせ、果ては攻撃をしかけてきたりしていた。

そのため、地球防衛艦隊司令部は外惑星方面に巡洋艦複数(駆逐艦を随伴させることもあり)を派遣して抑え込み、戦力が回復した時点で太陽系からの放逐か殲滅を企てていたが、『伊吹』『鳥海』は積極策(待ち伏せ攻撃)を併用し、今回初めて3隻を葬った。

――今回撃沈された3隻はデザリアム艦隊に壊滅させられたナグモー増援艦隊の生き残りで、艱難辛苦の末太陽系まで辿り着いたのだが、友軍との合流目前で地球軍の刺客によって斃された。
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