第4章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)その2

□説得
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――『ヤマト』第1艦橋――

スクリーンの左半分には『白根』の嶋津冴子、『水無瀬』のナーシャ・カルチェンコ、そしてデスラーとタランが映り、右半分にはスターシャと古代 守が映っていた。

「兄さん、スターシャさん。こっちは迎える準備ができている。早く脱出を!」
「イスカンダル星の地殻が脆くなっているのはわかってるだろう?古代!」

再会を喜び会う間もなく、古代(進)と真田は2人に対する説得を開始。

『私も同感だ。生きてさえいれば、新たな道が見つかるものだ。早く脱出したまえ』

デスラーも改めて説得を図る。

『‥‥‥‥』
『‥‥‥‥』

一方、冴子とナーシャは画面を注視しつつ、無言でやりとりを聞いている。
まずはスターシャと面識がある者に任せようというわけだ。
そんな中、森 雪も説得に加わった

「スターシャさん、私達は、貴女方から受けたご恩を片時も忘れたことはありません。一刻も早くヤマトにおいで下さい」

『貴女方』と複数形で言ったのは、火星で命を落としたスターシャの妹、サーシャを含めているからだ。

――王妹サーシャ・イスカンダル(過去にも同名の女王がいたため、正確にはサーシャU世)の遺体は古代と島の手で埋葬されていたが、ガミラス戦役後、地球連邦議会は全会一致で彼女を連邦永世名誉市民に指名し、墓所も整備されていた――。

『ありがとう、地球とガミラスの皆さん‥‥ですが、私はイスカンダルを預かる者。たとえ崩壊することがわかっていても‥‥だからこそ、この星を離れることはできません』
「スターシャさん‥‥」
『‥‥‥‥?』

スターシャは穏やか、かつはっきりと言い切ったが、僅かだが表情を曇っていることに冴子は気づいた。
完全に覚悟が定まっていないのだろうか?

(何かがスターシャをためらわせている。‥‥!そうか、ひょっとしたら!?)

古代守と愛し合えるのだから、スターシャの感性もまた地球人に極めて近いはず。
だとすれば、星と運命を共にするという彼女の覚悟を鈍らせている最大の要因は“あれ”ではないのか?

「‥‥古代、1ついいか?」
「?‥‥何だ?」

冴子はカマをかけた。

「生まれたのは太郎?花子?」
「‥‥(;゚Д゚)」
『‥‥(;゚Д゚)』
『‥‥(--;)』
『‥‥?』
『????』

あまりと言えばあまりにKM(空気無視)な、とうに化石化した喩えに『白根』『ヤマト』『水無瀬』のブリッジクルーは一様に脱力。
真田と守は本当に頭が痛くなった。

一方、スターシャやデスラー達は意味がわからず、きょとんとしていた。
守は、一瞬のフリーズから再起動し、相変わらずな僚友の残念ぶりに辟易しながらも一言で答えた。

「‥‥サーシャだ」
『!!??』

その名の由来を瞬時に理解できない者は、地球防衛軍に入る資格はないと言っても過言ではなかった。

ともあれ、サーシャという一人娘の存在が、冴子ら説得する側にこの上ないアドバンテージを与えたのは事実である。

(‥‥さすが艦長、残念でサイコーだ)

とは、『白根』副長、松島淳一の弁だ。

「ならばなおの事、お前達は生きてサーシャを育て、成長を見届ける責任があるんじゃないのか!?」

守の答を聞くや否や、冴子は2人に迫る。
古代(進)や真田に雪、更にはデスラーまでもが頷いて再び説得を始めた。

『スターシャ、生きてさえいれば、道は必ず拓ける。私はそう思うよ』

‥‥イスカンダル王族にどのような宿命があるのかはわからないが、サーシャには地球人の血も流れている。イスカンダルの宿命に囚われることはないはずだし、母たるスターシャも、王として背負ってきた荷を下ろしても、誰も責めはしない。

『‥‥‥‥』

スターシャの表情に苦悩が現れる。

(彼女の弱味につけ込むようで心苦しいが、今はそんな道徳論を述べている状態じゃない)

友好国人としての倫理や道徳もさりながら、少し前にガミラス艦隊からもたらされた、謎の反応。
敵艦隊に命令を下していた者と考えるのが至極当然で、そんな連中が来る前に、守とスターシャ、それにサーシャの名を継いだ赤児を何としても助けなければいけない――。
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