第4章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)その2

□追いかけて赤色巨星
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   ――『白根』――

(まずいな‥‥)

艦長・嶋津冴子は懸念を隠しきれずにいた。

13TFとガミラス艦隊はイスカンダルと並走を続けているのだが、その速度は亜光速に達し、なおかつ予想進路沿いには直径が太陽の700倍になる赤色巨星が存在し、もうかなり接近している。

(イスカンダルが重力に捕まったら最悪だ)

艦船はともかく、イスカンダル星はそのまま引きずり込まれてしまうし、その前に地表が焦土になってしまう。
通信を繋ごうにも、赤色巨星からのフレアノイズが酷く、まだ繋がらない。

「10時50分の方角、上下角11から小惑星1、イスカンダルに接近!2分後に最接近しますが、衝突の可能性も30〜40%あります」
「破砕する。主砲発射用意!」

冴子は直ちに破砕を決断し、指示を出した。
‥‥程なく『白根』『ヤマト』の主砲が火を噴き、小惑星は破砕された。


  ――『ヤマト』医務室――

“コーン”という音が響く。

はっとして辺りを見回すフェイトに佐渡が話す

「極小惑星が艦腹に当たったんじゃよ。寿命が尽きかかけた恒星系じゃよくあることさ」

先ほどからモニターに映っているのは赤色巨星の表面。

赤色巨星自体は、次元航行艦に乗っている時に何度か見たが、これほどの近くで見たことはない。

次元航行艦で恒星に接近するような任務はないし、艦体が保たない。

しかし、こちらの世界の艦船は何の影響もなく、小惑星の砲撃破砕までやってのけた。

さっきの戦闘にしても、敵の旗艦らしい大型艦が突撃を試みたり、ガミラスにも波動砲と同じ原理の超高エネルギー兵器が存在したりと、フェイトは血の気が引く思いだった。

まさに質量兵器の見本市みたいな状況で、魔法至上主義の管理局員が見たら腰を抜かすか怒り出すだろう。かといっても、この世界で今の管理局が介入したところで、無視されるか皆殺しに遭うだけだ。

幸いなのはヴィヴィオ・コロナ・セルボ達が特段の精神的負担を蒙っていないことだ。

(それにしても、ついこの間まで敵対していた国の元首とも普通に会話してしまうとは‥‥)

佐渡の話では、地球はガミラスとの戦争で人口と生物の大半を失い、ガミラスも本星に大打撃を蒙ったという。
休戦したとはいえ、互いの怨み辛みは薄れていないはずで、刺々しいやりとりがあってもおかしくはなかった。

(先の事を考えれば、過ぎた事で相手の非を鳴らす暇はないということかな‥‥?)

今はイスカンダル救援という共通の目的があり、その先も国土・国家の再建が最優先だからと割りきったのだろうか。

(もっとも、私達の世界もあまり変わりない、か‥‥)

地球とガミラスの関係を管理局と反管理局勢力や魔導師と非魔導師、あるいは高ランク魔導師と一般ランク魔導師に置き換えれば、内情はさして変わらない。

JS事件で構造的な問題が明らかになり、改革の動きが出ているものの、管理局に身を置く立場からみるとまだまだ小手先の改革でしかない。

管理局が発足して約80年経つが、根源的な問題は手付かずに等しい‥‥。
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