第3章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)
□慌ただしき出撃A
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デスラーからの緊急電から20時間後の1910時、13TFは火星第2基地を後にした。
『白根』『ヤマト』『水無瀬』は火星の重力圏を離脱するや、艦首を垂直に立て、太陽系北極方向に針路をとった。
木星軌道方面に向かわなかったのは、白色彗星帝国軍残党との戦闘を避けるためだ。
地球防衛軍は白色彗星帝国戦終結直後から、戦闘可能なパトロール艦と巡洋艦、駆逐艦、護衛艦等で太陽系内の哨戒を再開していた。
これまでに木星・土星圏と水星軌道上で敵駆逐艦3隻を捕捉し、降伏か太陽系外への即刻退去を求めたが、いずれも拒否して戦闘をしかけてきたため、全て撃沈していた。
ズォーダーという巨大なカリスマ指導者を突然失ったためか、敵残党の指揮系統はまだ確立されていないと軍司令部は判断しており、残党の指揮系統が整う前に捕捉・掃討すべく損傷艦の修復と再就役、さらに新造艦の就役もようやく進んでいたが、これらの艦船群は太陽系防衛に必要不可欠なものであり、13TFも、本来は外惑星〜太陽系外縁方面への哨戒と掃討任務にあたるはずだった。
が、現状は今のとおり。
急転直下のイスカンダル行きだ。
当初、軍中央サイドは『水無瀬』をはずして別部隊に編入するつもりだったようだが、イスカンダル星が本来の軌道を外れて暴走状態である以上、探査能力がずば抜けて高いパトロール艦は欠かせないと13TF側、特に『水無瀬』が強硬に主張し、そのままの態勢でイスカンダルに向かう事になった。
「火星圏を離脱しました」
「了解。予定どおり1時間後に最初のワープを実施、一気にオールトの雲まで向かう」
舵を握る町田の報告に、冴子は予定どおりのワープ実施を告げた。
『白根』『ヤマト』『水無瀬』は亜光速に増速し、一路北極方面に向かう。
――ミッドチルダ首都・クラナガン郊外――
「たっだいまー♪」
「おかえりー、ヴィヴィオ」
「なのはママ、今日は早いんだね♪」
この時間帯では、大抵の場合、家にいるのは母親のなのはではなく、旧機動6課以来の馴染みであるハウスキーパーのアイナ・トライトンなのだが、この日はなのは本人が先に帰宅していた。
「うん、今日は教導の最終日だから、午後イチで終わったんだ。
で‥‥どうだった?」
なのはは娘に目下の最重要事項の報告を促す。
「うん‥‥はい、これ」
ヴィヴィオはカバンから紙の束を出してなのはに渡した。
「ん〜〜‥‥」
しばらく紙をめくって内容を確認していたなのはだが、ほどなく相好を崩した。
「うん、よくできました♪」
「でしょ♪」
ヴィヴィオの成績は29人中7番目だったが、なのはが注目したのは、順位ではなく各教科の得点だ。
いずれも前の試験より上がっていた事になのはは満足した。
「うん、これなら予定どおり出発だよ」
「やったー!」
ヴィヴィオは喜色満面だ。試験の成績が悪ければ、今回の旅行は見送りになっていたところなのだ。
「コロナちゃんはどうだったのかな?」
「4番だった。ゴーレム創成が凄いんだよ、コロナは」
「そうなんだ。じゃ、一緒に行けるね♪」
「うん♪」
先述してあるが、この旅行にはコロナ・ティミルも同行する予定になっている。
そして――。
「フェイトママも、今夜には帰れるって」
「そうなんだ、やったー!」
フェイト達が乗った『レオニダス』はミッド標準時間の今朝、無事本局に入港し、保護した子供達はシャマルによって早くも治療が始まっている。
フェイト・シャリオ・ティアナの3人は、機動6課時代から貯まった有給休暇の消化が厳命されたため、報告が済み次第、翌日から10日間の休暇が与えられることになっていた。
「地球じゃ《わーかほりっく》って言うんだっけ?フェイトママ達みたいな人達の事」
「あ、あははは‥‥」
溜め息をつく娘に、母親は力なく笑うしかない。
なのは自身も、正式入局から機動6課解散までの9年間は有給休暇どころか公休すらあまり取ったことがなく、人事統括官のレティ・ロウランから説教された事もあるのだ。
機動6課解散で教導隊に復帰してからは、少なくとも公休はしっかり取るようになったが、これは母親としての責任とともに、長年の無茶でガタガタになった身体やリンカーコアのリハビリをシャマルから厳命されているからだ。
「じゃ、晩ごはんまでに準備して来るね〜」
パタパタと自室に向かうヴィヴィオを見送るや、なのはは調理に戻るのだった。
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