第3章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)

□訓練航海B
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――小惑星帯・訓練指定空域――

「全機、続けっ!」
「「了解!」」

垂直尾翼と尾部が黄色く塗られた山本のコスモタイガーを先頭に、坂本と椎名をそれぞれのリーダーにしたコスモタイガーの編隊が小惑星帯に突入していった。

「主砲、発射用意!」
「はいっ!主砲発射用意!」
「目標まで、30宇宙`」

それを見た『白根』副長兼戦術長の松島が砲戦準備を命じ、新人の砲術員が操作パネルに向かい、観測席の三沢が目標までの数値を読み上げる。

――13TFはこの小惑星帯で最大の星「ケレス」の第1基地を拠点に、火星から木星にかけての空域で新乗組員の訓練を行っていた。

訓練は、初日こそ新人たちのポカが続発したが、坂本と北野のパンツ一丁艦内マラソンが効いたのか、黒沢たちが合流して以降、日を追うごとに、
少しずつ形になってきた。

新人パイロットの配属に際して山本が提案したのは、一撃離脱をはじめとする集団戦だった。

「残念ながら、個人の高い技量で敵機と渡り合えるパイロットは少数になってしまいました。
これを契機に、個人技主体から集団戦に転換して、ヒヨコ達の生存率を上げ、経験を積ませて全体を底上げすべきです」

これには冴子、古代、ナーシャ・カルチェンコにも異議はなく、1小隊4機による集団戦を教え込むことにしたが、そこは新人とはいえ優秀な連中。皆山本の真意を理解しているようだ。

――『水無瀬』――

「旗艦より発光信号。『突撃隊形トレ』です!」
「面舵10、艦首上げ5!本艦が先頭に出ます!」
「対空・対艦戦闘スタンバイ完了」

観測員からの報告に、艦長のナーシャ・カルチェンコが進路指示を、副長兼戦術長の篠田 巌は全火器が使用可能であることを報告した。
これから13TFは『水無瀬』を先頭に新人パイロットによる対艦攻撃訓練の標的を務めるのだが、艦側も黙って標的にされるつもりはなく、対空戦闘訓練を兼ねている。


   ――『白根』――


「右舷(みぎげん)、対空戦闘用意!」
「了解。全砲門、対空ミサイル撃ち方用意!」

『白根』『ヤマト』『水無瀬』の3艦は主砲・副砲に仰角をかけながら右旋回させた。


――コスモタイガー・椎名 晶機――

『全機、フォーメーションAS!』

山本隊長機から対艦戦闘命令が出た。

「了解!皆、フォーメーションAS、行くよっ!!」
『おう!』
『了解!!』

第2分隊リーダーである椎名がメンバーに呼びかけるや、すかさず僚機から返事か来た。


   ――山本機――

「向こうの艦長サン達は非常識だからな!気を抜くと逆に追い回されるぞ!」

――嶋津冴子とナーシャ・カルチェンコは、かつて駆逐艦『ひびき』とフリゲート『ゆうがお』では艦長と副長兼航海長としてコンビを組み、演習では採用間もないコスモタイガーを追いかけ回すという“暴挙”に出た事がある。
今回は『ヤマト』も混じっているからそんな事をする可能性は小さいが、『白根』『水無瀬』は『ヤマト』ほどの打たれ強さがない代わりに足が速くて小回りが利く。

あの非常識艦長達が、ただ回避行動だけを取るとは思えなかった。

「全機攻撃開始!目標『ヤマト』。坂本隊は直上、椎名隊は俺についてこいっ!」
『了解!!』
『了解しました!』

威勢いい返答に、山本は唇の端を持ち上げた。

「全機、攻撃開始!」

二手に分かれたコスモタイガーは『ヤマト』目掛けて突っ込んでいった。
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