第3章:いざイスカンダル!そして‥‥(イスカンダル救援作戦編)

□訓練航海@
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艦を松島に任せた冴子は一人、英雄の丘に足を運んだ。

中央に立つ高い石碑を囲むように並ぶ御影石にはガミラス戦に加え、白色彗星帝国との戦争で命を落とした者達の氏名が新たに刻み込まれた。

その石碑の隣には、祈る女性のブロンズ像が立っているが、これは、イスカンダルから地球へ命懸けで波動エンジン等の超技術を伝えたサーシャ・イスカンダルを顕彰したものだが、像の基部には新たにテレサの名が刻み加えられた。

さらに別の一角には、地球防衛軍として戦い、斃れていったガミラス帝国軍兵士と、ガミラス本星決戦で命を落とした住民達の慰霊塔も建立されているが、近々白色彗星帝国の戦没者も合祀される予定だ。

「‥‥‥‥」

ロクでなしどもが売り付けてきたクソッタレな戦争のせいで、またも膨大な命が失われた。

ズォーダーら、白色彗星帝国の指導層にも彼らなりの正義があるのだろうが、自国民に甚大な犠牲を出した挙げ句、自分達まで斃れたのは最早自業自得というしかなく、ロクでなし共という評価しかない。

言っては何だが、『ヤマト』への怨恨を昇華させて国家再興へシフトしたガミラスのデスラーの方が、国を統べる者としては数段上だろう。

とはいえ、いくら慨嘆したところで彼/彼女たちは還ってこない。

宇宙の平和なくして地球の平和も成立しないことは、今回の一件ではからずも証明された。

再建にはかなりの期間を要するだろうが、どんなに厳しい前途が待っていようと、必ず地球防衛軍を、地球のみならず宇宙の平和の護り手に足るようにする。
それが戦い倒れた者に対する手向けだろう。


3つの碑にそれぞれ花を供え、敬礼してから踵を返してその場を離れる。
戦士の墓前に長居は無用。それが冴子の主義だ。

――内惑星防衛艦隊司令部に顔を出してから、地下ドックの『ヤマト』に足を運んだ。
冴子は曲がりなりにも13TFの司令官代理だ。指揮下の艦の状態を把握するのも指揮官の義務である。

古代、雪と戦死した徳川以外の第1艦橋メンバーは今日退院で、機関室を守っているのは、新機関長の山崎奨のはずだ。

「これは嶋津艦長、わざわざ済みません」

冴子に気付くや、山崎は作業の手を休めて挨拶してくる。


「いえ。お忙しい所に来てしまったようで、こちらこそ申し訳ないです」

部隊司令官代理に気づいた他の機関員が敬礼しようとするが、冴子は手ぶりで制し、作業を続けるよう促した。
艦内通信装置の前に立つ。

「ここで、徳川さんが‥‥?」
「はい」

まさにここで、山崎は徳川を看取ったという。
彼らが最期まで持ち場を守り通した結果、『ヤマト』は息絶えずに地球に戻れたのだ。

沖田が指揮していた艦には大抵徳川も乗り組んでいたもので、冴子や古代守も新任士官だった頃に知己を得ており、沖田や土方とはまた違う親しみを持っていた。

ま、やんちゃが過ぎてしこたま絞られた事もあるのだが――。

「‥‥‥‥」

凡そ40年にわたり、機関一筋に生きた宇宙戦士に敬意を表し、しばし瞑目した。

山崎や生き残った機関員たちが中心になって復旧にとりかかったかいあって、『ヤマト』は息を吹き返した。

「そう言えば、(徳川さんの)次男坊が今度乗り組みになりますね?」

「ええ。親父から受けた教えをバッチリ叩き込んでやりますよ(笑)」
「お願いします。‥‥あ、これは古代が言う事でしたね(笑)」
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