第2章:侵掠の彗星2plus(白色彗星帝国戦役〜インターミッション)

□新編!独立第13戦隊
1ページ/2ページ


  ――オセアニア州・シドニー――

白色彗星帝国・超巨大戦艦からの攻撃を免れた旧オーストラリア第1の都市シドニー。

ここのセントラルスタジアムで、白色彗星帝国戦役での戦没者慰霊式典が挙行された。

北半球の主だった都市や南米州の大都市であるサンパウロやリオデジャネイロ、ブエノスアイレスも軒並み被災したため、ここシドニーのスタジアムに連邦政府・地球防衛軍の首脳・高官、戦没した各州の軍人・民間人遺族代表らを招いて行われたのだが、防衛軍司令長官・藤堂平九郎と、連合艦隊司令長官・土方 竜は真っ先に入場し、遺族が全員退場するまで式場に留まり続けた。

――新横須賀基地・内惑星防衛艦隊司令部――

庁舎の一室、2人の男女が所在なげに座っていた。

在室しているのは、巡洋艦『白根』戦術長の松島淳一大尉と、同じく『白根』正操舵士の町田順子少尉だ。2人とも、『白根』が所属する内惑星防衛艦隊司令部から出頭命令を受けていたのだ。

そこに、早足の足音が響いたと思うと、バンとドアが開かれた。

「済まない、遅くなったな」

予想どおり、入ってきたのは2人の上官である『白根』艦長の嶋津冴子だ。

敬礼する2人に座るよう促し、冴子も向かいに着席した。

「2人とも、怪我は大丈夫か?」
「幸い、掠り傷程度でした」
「私もです‥‥」
「‥‥そうか」

『白根』ブリッジクルーで戦死したのは副長兼航海長だった近藤清市准将(2階級特進)のみで、重傷も右頬裂傷の嶋津冴子(本人は軽傷と主張)だけ。他の者は軽傷か無傷だった。

「んじゃ、早速本題に入るかね‥‥全員起立!」

冴子の口調が変わり、3人とも踵を揃えて起立した。

「松島戦術長」
「はっ!」
「明日付で少佐に昇進。副長兼任を命じる」
「はっ!!」

松島に答礼した冴子は、町田順子に向き直る。

「町田操舵士」
「はいっ!」

かなり緊張しているようだが、構わず続ける。

「明日付で中尉に昇進。航海長代理兼任を命じる。
‥‥航海長は当面私が兼任するが、基本的には町田に任せる。判断に困る事案のみ持って来い。いいな?」
「!‥‥は、はいっ!!」

些か顔を強張らせた町田に、冴子は少し表情を緩めた。

「町田の実力は近藤さんの保証付きだし、私も直に見ていたからな。
それに、現実問題として、実戦を潜った舵取りは一層少なくなってしまったし、間もなく繰り上げ卒業の新人達が補充されてくる。
そういう状況下では、白色彗星帝国との戦いを経験したお前さん達を一人前の宇宙戦士として扱わないと、軍が立ち行かないのさ‥‥」
「‥‥わかりました。非才の身ですが、全力を尽くしますので、引き続きご指導お願いします!」
「ん。頼んだぞ」

無論、冴子は町田を“実は航海長”にするつもりだった――。

辞令伝達を終えた3人は着席。冴子は『白根』の修復状況や復帰後の任務について2人に伝えた。

@『白根』は現在横須賀工廠において修復及び一部改装工事中。

A修復には、建造中に敵巨大戦艦の攻撃で被災した2番艦『大雪』から取り外したり取り付け予定の艤装品・資材やモジュールを流用して工期を短縮中。

B13TFは現在の『白根』『ヤマト』に加え、竣工したばかりのパトロール艦(哨戒巡洋艦)『水無瀬』が新たに編入される。


――『水無瀬』は白色彗星戦で全損になった『九頭竜』の代艦だ。

『九頭竜』は、シリウス・プロキオン方面への強行偵察や敵機動部隊攻撃に活躍したが、敵都市要塞との戦闘前、敵駆逐艦2隻を相手に戦って1隻を撃沈。
体当たりを仕掛けてきたもう1隻に対しては移乗白兵戦で逆襲し、敵艦長を討ち取る等してこれを占拠した。
しかし当の『九頭竜』も損傷が酷く、全損・廃艦と判定されたものの、艦長のナーシャ・カルチェンコや副長の篠田巌ら大半の『九頭竜』乗組員は、そのまま『水無瀬』に乗り換えたという――。


C13TFは新乗組員配属後、暫くの間太陽系内で訓練任務につき、訓練終了後、太陽系内に潜伏する白色彗星帝国軍残党に対する掃討任務にあたる。

以上が13TFに与えられた新任務だが、予想外の事態により根本的な変更を余儀なくされることになる――。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ