第2章:侵掠の彗星2plus(白色彗星帝国戦役〜インターミッション)
□インスペクション
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――某宇宙空間――
『総司令閣下、敵艦隊の掃討はほぼ終了致しました。逃亡したのは数隻程度です』
「わかった。デーダー、直ちに敵艦の残骸回収にかかれ。ガトランティス艦隊の目的を掴まなければならんからな」
『はっ!』
自動制圧惑星『ゴルバ』に座乗したメルダースは、デーダーに撃破したガトランティス艦船の残骸回収を命じた。
(ガトランティス本星の通過からしばらくして、大規模な輸送船団が後を追うようにここに現れた。船団の目的地と積み荷が解明すれば、ガトランティスの現状もある程度わかるだろう‥‥)
ガトランティスとの全面対決は聖総統より禁じられているが、資源の現地調達(収奪)を基本とするかの国が、本星に続いて輸送船団まで動員するのは異例と言って良い。
(意外に苦戦を強いられているのかも知れない)
船団もそうだが、護衛艦隊も大規模だった。1個機動艦隊をそのまま護衛につけるほどだ。船団はよほど重要な物資を運んでいた可能性が高い。
メルダースはそう踏んでいた。
(あの銀河にはボラー連邦以外、めぼしい星間国家はないはずだ。
案外、無名ながらも侮れない、強い国家が存在しているのかも知れんな)
ガトランティスが侵攻していったのは、あの銀河の辺境部で、ボラー連邦の勢力圏外だ。地歩を固めてから攻勢に入るつもりなのだろうが、その意図を挫くような国家なり勢力なりがあるのならば、我が国としても無視するわけにはいくまい――。
(案外、ガトランティスが敗れる可能性もある。見過ごせないものだな‥‥)
物事に絶対はない。あのガトランティスが敗れ去ることだってあるだろう――。
――ほどなく、メルダースはこの予感が的中したと知る事になる――。
――そこから少し離れた宙域――
ガトランティス艦船の残骸に紛れるように佇んでいるのは時空管理局の次元航行艦『クラウディア』。
『エルム』が消息を絶った時、一番近い次元空間にいたのが『クラウディア』だったため、急遽調査に赴いたのだが、“仮称アンノウンC”の艦隊がまだ留まっていたため、急速転移できる態勢のまま、注意深く様子を伺っているのだ。
「集められる限りの物件を集めたいね‥‥」
「そうだな。まずは己の敵を知らない事にはな」
映像を見ながら呟くフェイトにクロノが応える。
クロノが考えたのは、“エネミーA”(ガトランティス)の残骸や兵士の遺体を回収することだ。
さらに、可能ならば艦船のエンジンや武装のパーツも回収したい。
エンジンのアッセンブリーや原型を留めた艦船を曳航して持ち帰れたならば大儲けだろう。
「でも、訳がわからなくなってきましたね‥‥」
「うん‥‥でも、3勢力全てを敵に回すのだけはごめん被りたいわね」
「はい‥‥」
シャリオとティアナも言葉を交わす。
旧機動六課で一番メカに精通しているシャリオの目は真剣だ。
「亜光速で移動できる戦闘艦か‥‥。管理局の船より遥かに頑丈な造りよね」
熱を帯びた口調になるシャリオにティアナは苦笑したが、ティアナもまた、目の前で残骸と化した艦隊と、遥か先の艦隊がどのようなフォーメーションでぶつかり合ったのか、興味を抱いていた。
(旗艦のブラックボックスが回収できればいいんだけど‥‥)
旗艦ならば艦隊運用の記録が残っているかもとティアナは期待していたのだが、旗艦は『ゴルバ』の無限α砲で、残骸すら残さずけし飛ばされていた――。
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