第2章:侵掠の彗星2plus(白色彗星帝国戦役〜インターミッション)

□頓挫
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――天の川銀河まで約22万光年の宙域――

何かと目障りなデザリアム帝国軍が後続の輸送船団を襲っていると知った白色彗星帝国軍第5遊動機動艦隊のナグモー司令官は、急ぎ救援のため艦載機と一部艦艇を差し向けたのだが――。

「何だ!?あれは‥‥!」

艦載機から送られてきた敵の姿に、ナグモー以下の幕僚は絶句した。
デザリアム特有の、漆黒の円盤形艦艇の中に、異様な形状の巨大な物体が佇むように存在していた。

艦艇群の中央にいる大型艦は、この大型空母に勝るとも劣らぬ艦体規模だが、その後ろにいるあれは、大型艦やこの空母など比較にならない規模の艦、あるいは小型要塞だ。

ナグモーはあれが危険極まりない存在だと直感した。
あれが噂に上っていたデザリアムの新たな切り札、ムルバ形戦略惑星。

「デバステーター全機、目標はあの戦略惑星だ!他の艦には構うな!戦艦群も前進!艦橋砲戦準備!」

ナグモーはあの戦略惑星を最優先の排除目標に定め、集中攻撃を命じた。
直ちにデバステーター隊は機体を翻して、敵艦隊後方の戦略惑星に向かった。

無論、デザリアム軍も艦載機を発進させるとともに対空射撃で迎撃する。
そこに白色彗星帝国軍の艦上戦闘機イーターUも突入し、ドッグファイトが始まった。

半数近くのデバステーターが撃墜されたり、機体が傷ついて撤退していったが、残りは何とか迎撃網を抜けて、自動戦略惑星に向かった。

と、自動戦略惑星は、上部を少し迫り出したかと思った次の瞬間、デバステーターに無数のビームの束を叩きつけてきた。

あっという間にデバステーターは大半が駆逐されてしまった。
それでも数機は被弾炎上しながら対艦ミサイルを放ち、見事に命中させたのだが、漆黒の装甲には目立った傷はなく、離脱を図ったデバステーターも追い撃ちで全て僚機の後を追わされた。

「くっ‥‥第2波攻撃、急げ!」

ナグモーは戦艦群を前進させるとともに、第1波に倍するデバステーターで再攻撃を指示したのだが、直後、あれがまた動いた。
異様な巨体の括れた中央部が動いたかと思うと、巨大な砲門が開かれ――。

極太の光の柱が輸送船団を突き抜けたと思うと、柱の至近距離にいた艦船や艦載機も次々と爆発していった。

「せ、船団の4割が消滅!先程の奇襲を含めると、船団は半数以上が失われました!」
「何!?‥‥」

光の柱が通り抜けていった宙域はぽっかり穴が空いたようになり、つい先程までそこにいた艦船や艦載機はきれいさっぱり消し去られ、その至近距離で破壊された艦等の残骸が漂うだけだ。

「な‥‥何だ?今のは!?」
「超高タキオンエネルギーと思われますが、同時に超重力反応も検知されています」

呻くように問うナグモーに、微かに震える声で幕僚が応える。

「あのハドウホウと同系兵器だというのか!?」

超高タキオンエネルギー砲は、かつて帝国の技術陣が実用化しようとして成功しなかった兵器だが、ガミラスや地球は実用化し、ゴーランド艦隊はこれで掃滅させられた。

「艦隊の半分は戦略惑星に攻撃を集中!2射目を撃たせるなっ!!
残る半数は船団とともにこの宙域を離れろ!残る物資だけでも送り届けるのだ!!」

ナグモーは艦隊の半分をすり潰してでも、残る物資を首都星に送り届けると決意した。

戦艦が前進して衝撃波砲戦を試みるが、射程に達する前に敵大型戦艦が砲撃を始め、次々と撃破されていく。
さらに敵戦闘攻撃機が接近して対艦ミサイルを放ち、爆発炎上する艦が続出する。

敵艦隊は中・大型艦をこちらの艦隊に当て、ガードが薄くなった輸送船団には中・小型艦をぶつけるつもりのようだ。

「あの決戦兵器がまた発射される前に‥‥!」

――焦慮を深めるナグモーが光の柱に飲み込まれたのは、それから間もなくしてだった――。
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