第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)

□トラ!トラ!トラ!2201A
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 ――地球防衛軍・連合艦隊旗艦『アンドロメダ』――

「土方司令、21TF『レキシントン』から入電しました!」
「読め」
「はいっ‥‥『1225時、威力偵察隊が敵機動部隊を奇襲。先頭の中型空母と旗艦らしき大型空母各2隻に命中弾を与え、4隻とも炎上中。
‥‥続いて第1次攻撃隊も敵空母を攻撃中。敵戦闘機の妨害は僅か』‥‥以上です!」
「そうか‥‥」

土方の厳しい表情が僅かに綻び、艦橋スタッフからも喜びの声が上がった。

序盤は上出来だ。敵が浮き足立っている間に、どれだけ戦果を拡大できるか、だな。
とにかく、敵攻撃機の発進を阻止することだ。艦載機を発進できない空母など、ただの浮かぶ箱に過ぎない。
頼んだぞ、21TF、『ヤマト』『白根』‥‥。


21TFは一路フェーベ宙域に近づいていた。
既に第2次攻撃隊は全機発進し、第1次攻撃隊の出撃機が続々と戻って来ている。

「奇襲成功とはいえ、それなりに被害は出ているな‥‥」

『白根』の艦長席で、冴子は一人ごちる。

『ヤマト』から出た真田機は無事帰還し、加藤・山本両隊や『白根』瑞雲隊は未だ全機が戦闘空域に留まっているが、ルーキーが多い攻撃隊はそうはいかなかったようだ。

数は少ないものの、何機かは煙を引いたり、傍目からもわかるほど、ヨタヨタしながらやっと飛んでいる機もいる。

『白根』も先程1機の傷ついた攻撃機を収容したばかりだ。

初実戦の搭乗員は3人とも軽傷あるいは無傷だったが、極度の緊張でコクピットや後部銃座からなかなか降りられずにいた。
彼らはそのまま『白根』預かりになったが、機体は修理不能と判定され、ブラックボックスを回収後、直ちに強制投棄処分された。

もちろん彼らは悔しがったが、程なく『人間万事塞翁が馬』の意味を、身をもって知ることになる。


 ――フェーベ宙域、ゲルン機動部隊――

時間を追うごとに、機動部隊は無残な状況になっていった。

最初の奇襲攻撃で旗艦と先頭集団が被弾したため隊列が乱れ、旗艦の通信系統も一時停止してしまったため、対応指示が遅れたのだ。

続いてやってきた敵の攻撃機は対空砲火をかい潜り、空母にだけ襲い掛かかってきた。

今度の攻撃機が搭載していた対艦ミサイルは大型で破壊力も大きく、直撃を受けた中型空母は次々と針路を外れたり、速度を落として落伍する。
そして、大爆発を起こして四散するものも出ている。

指揮官からの命令が徹底されていたのだろう。敵は護衛の艦には一切関心を示さず、空母だけを襲っている。

旗艦を含む大型空母は未だ全て残っているが、無傷の艦はなく、肝心の艦載機を出せる状態ではない。

艦内では誘爆や火災が発生し、隔壁の閉鎖や区画放棄で持ち堪えているが、果たしていつまでもつのか‥‥?


――『ヤマト』艦載機は、第1次攻撃隊の攻撃が始まってからもしばらくその場に留まり、空母の艦橋や発進を図る敵艦載機にパルスレーザー掃射を加え続けた。

「加藤隊、山本隊は帰還せよ!」

第1次攻撃隊の指揮官を兼ねていた古代進は、空域に留まって支援を続けていた加藤達に帰還命令を出した。

一方、『白根』の瑞雲隊は、まず2機が攻撃を終えた第1次攻撃隊を先導しながら自艦に戻り、残る2機は第2次攻撃隊と共に戻る予定だ。

そして、入れ替わりに第2次攻撃隊が戦闘宙域に到着した――。
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