第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)

□トラ!トラ!トラ!2201@
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十数機の艦載機が、パトロール艦『九頭竜』をフライパスして虚空に消えていく。

――敵空母撃滅の任務を託された第21任務部隊(21TF)だが、タイタンを発って2時間後、シリウス・プロキオン方面の索敵を終えた『九頭竜』が合流した。
『九頭竜』は、艦長ナーシャ・カルチェンコの希望を受けた土方の指示で13TFに臨時編入され、21TFの先頭を進んでいた。

『ヤマト』から発進した索敵機は、一騎当千のエース、加藤三郎と山本 明が率いる各8機のコスモタイガーUと、技師長の真田志郎とアナライザーが搭乗した長距離索敵専門のコスモタイガー三座型の計9機。
加藤・山本両隊は増槽とともに対艦ミサイルを搭載し、敵発見即攻撃の態勢をとっていた。

同行するのは『白根』から発進したコスモタイガー複座偵察型“ピーピングタイガー”改め“瑞雲”4機。
“ピーピング”の名称は女性クルーから強い不評を買ったため、艦長の嶋津冴子は、自艦配属機を独自に“瑞雲”と名付けた。
機体上部に円盤型レーダーを取り付けたことで、索敵範囲が飛躍的に増しているが、いざという時はパージ可能だ。
この瑞雲1機と『ヤマト』の戦闘機4機がチームを組んで敵機動部隊を探すのだ。

――愛機のコクピットで加藤三郎はぼやくことしきり。

「‥‥ったく、レーダーも無線も使えないなんて、太平洋のど真ん中で零戦に乗ったような気分だぜ」

山本もぼやきを漏らす。

「温帯の浜辺で星の砂を探すようなもんだな‥‥」

彼らのぼやきもわかるが、レーダー、無線とも敵発見まで使用禁止というのは、敵艦隊に悟られない為で、加藤たちも十分理解した上でぼやいてみせたのだ。

幸いなのは、超高感度のパッシブレーダー(逆探知器)が瑞雲に搭載されていたことだろう。

一方、加藤・山本たちとは別に、真田とアナライザーが搭乗したコスモタイガーも、衛星を縫うように土星圈外縁部に向けて索敵を続けていた。

「反応あるか!?」
「アリマセン」

このやり取りを何度繰り返しているか。
アナライザーは敵艦隊の通信信号を探っているのだが、まだ何の反応もないようだ。

21TFの各艦、そしてタイタンの連合艦隊司令部も、敵機動部隊発見の報せを待ち詫びていた。

敵影を見ぬまま、真田機は土星圈の最も外側、衛星フェーベに達しようとしていた。

さすがの真田にも焦りが見え始めていた。
敵機動部隊は速度を上げて本隊と合流したのか、既に攻撃隊を発進させてしまったのか……。

空の空母を攻撃しても何の意味もない。
発進の直前、格納庫や飛行甲板に爆装した攻撃機が並んでいるところを叩かないと意味がないのだ。

「!!?」
「!」

突然、アナライザーが目まぐるしく頭部を回転させ始めたが、ほぼ同時に、瑞雲のパッシブレーダーにも反応が生じた。


   ――『白根』――

「艦長!『ヤマト』真田機が敵機動部隊を発見しました!和文モールスです!!」
「よし、全艦対空対艦戦闘態勢につけ!」

敵機動部隊に最も近かったのは真田機で、他の偵察機もそちらに向かったが、その間にアナライザーが和文モールスで敵情を打電した。
モールス信号、それも和文モールスにしたのは、『ヤマト』から齎された、ガミラスと白色彗星帝国がツーカーであるという情報ゆえだ。

ガミラスは地球の英語を、完璧とはいかなくとも自国語に意訳できるレベルにあり、そのノウハウが白色彗星帝国側に漏れているのを警戒してのことだ。
それゆえ、21TFの日本籍以外の主要艦には、日本人、あるいは日本語知識が豊かな者を乗せており、目立ったタイムラグもなく攻撃戦闘モードに入れたのだ。

真田機からの連絡を受け、加藤・山本両隊が翼を翻してフェーベに向かう。

21TFの各艦も戦闘体制に入る。

「第1次攻撃隊、全機発進!」

ヨナミネ司令の号令を受け、5隻の戦闘空母からCT―U艦上攻撃機と爆装したコスモタイガーが次々と発進していく。

『ヤマト』からもコスモタイガーと、古代自ら操縦するコスモゼロが発進した。『ヤマト』搭載機は制空任務だ。

第1次攻撃隊は古代機を先頭に編隊を組み、敵機動部隊を目指し、真田機や強襲偵察隊が集結するフェーベに向かった。

第1次攻撃隊を送り出した空母各艦はすぐに第2次攻撃隊の準備にかかる。
一方、護衛の各艦は対空対艦戦闘態勢のまま敵機動部隊との距離を詰めていった。
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