第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)

□独立第13戦隊結成!!??
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――初任務を無事に終え、偶然とはいえ初戦果も挙げた『白根』は、月基地に戻り、第2工廠でその巨躯を休めていた。

一般乗組員は今日と明日で半舷ずつの上陸が許され、各々民間エリアに繰り出していった。

一方、艦内外の整備も行われるため、各部門のリーダーとサブリーダーは艦に残留した。


――月基地 第2工厰――

基地司令部からの呼び出しを受けた『白根』艦長の嶋津 冴子は、事務所の一角にある応接コーナーに通されていた。

「遅くなって申し訳ありません。嶋津艦長」
「いえ、私も先程入ったばかりですので、お気遣いなく」

入ってきた男と互いに挙手礼を交わす。
部屋に来たのは基地事務局次長の朱 豪であった。
「大活躍だったそうで。初戦果おめでとうございます」
「いえ。たまたま思いつきが当たっただけのことです。乗組員にも艦にも損害がなかったのが何よりです」

艦を直倒立させて警戒する挙に出たのは冴子が初めてで、なおかつ初戦果まで挙げたことは既に艦隊内に伝わっていた。

一見バカげたことではあるが、敵襲にすぐ対処出来たのは事実なので、表立って批判の声は上がらなかった。
しかし、最年少かつ女性初の戦艦艦長という、何かと目立つ立場にある冴子を疎む者からは、

『勃○する艦』

などと、早くも妙な二つ名を頂戴していた。

話題を変えるように、朱は冴子が予想していなかった事を口にする。

「それはそうと、土方司令から嶋津艦長あての辞令をお預かりしておりまして」
「私に、ですか?」
「はい。これです」
(‥‥!!?‥‥何じゃこりゃああっ!!?)

――手渡された辞令書に目を通した冴子は、しばし呼吸を忘れた――。


『内惑星防衛艦隊所属 系内遊動艦隊 独立第13戦隊司令官代行兼任を命じる

独立第13戦隊編成 巡洋艦『白根』・戦艦『ヤマト』
補足:同戦隊は、当分の間、連合艦隊司令長官直属とする』

『白根』を預かってから間がないというのに、もう戦隊司令代行?
それも『白根』と『ヤマト』だと!??

‥‥何なんだ、このツッコミどころ満載の辞令は?
内実は新兵と暴れん坊という、はみ出し者同士の部隊じゃないか!?

初の実戦で初戦果まで挙げたとはいえ、『白根』はまだ艦隊行動訓練を受けていない。
同型艦『大雪』が竣工したらペアで部隊を編成する予定だったからだ。

一方の『ヤマト』は、乗組員のスキルこそ突出しているが、やはり本格的な艦隊行動訓練は受けていない上、性能面でも他の艦と異なる部分が多く、容易に艦隊に組み込むわけにはいかないし、その時間すらない。

現実問題として、近日中に白色彗星軍との全面対決が始まりそうな現状では、両艦を既存の艦隊に組み込む時間はなくなっていた。

実際のところ、『ヤマト』はテレザート星からの帰途についており、2隻揃って行動するには今しばらくの時間がかかる。

ともあれ、『白根』が『ヤマト』の足を引っ張っては意味がない。

「『ヤマト』が戻るまで今しばらく訓練漬けだな‥‥」

――嶋津冴子は独立第13戦隊(13TF)を白色彗星問題が解決するまでの期間限定の部隊と解釈していたようであるが、13TFは、意外にも長持ちしてしまう――。

因みに、冴子は『白根』と自分への陰口を耳にするや、『白根』の艦腹にデフォルメした小便小僧を描き入れようとし、自ら原画を描いたのだが、原画を見た近藤が反対したため沙汰やみになったという――。

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