第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)

□執務官の驚愕
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「こ、こんな‥‥」
「何が、一体‥‥」
「ひどい‥‥」
「‥‥‥‥‥」

――そこにあるはずだった緑と水にに満ちた惑星はもはや痕跡すら留めず、無数の岩くれが漂うだけ。
私たちは声もなく、その光景を見詰める事しかできなかった‥‥。


――第145管理外世界『ワクラ』は、デバイスに最適な高品質の金属等が採掘できることと、大型竜の棲息地が多数存在することに加え、先住人類が存在しないため、時空管理局にとっては欠かせない世界になりつつあり、鉱石採掘や自然保護官が常駐し、観光地としても注目されつつある世界だった。

かく言う私の愛機『バルディッシュ・アサルト』や、我が親友・高町なのはの愛機『レイジングハート・エクセリオン』のカートリッジ部を形成する素材もここの産出だという。

ところが最近になって、資源輸送船が消息不明になる事件が相次ぎ、さらに調査に向かった次元航行艦、それも最新のXV級2隻までが行方不明になってしまった。

しかし、2隻目の『バトン・ルージュ』は、消息を絶つ直前、正体不明のミサイル艦隊と遭遇し交戦中と連絡してきた。

――管理局の次元航行艦には大口径魔導砲『アルカンシェル』や、少なからぬ小口径速射魔導砲も装備されていたが、それらを使う暇もなく、あるいは奏功せず撃破されたものと予想された。

そしてこの度、第3次調査隊として、義兄クロノ・ハラオウンが指揮する『クラウディア』と私、フェイト・T・ハラオウン、補佐官のシャリオ・フィニーノ、ティアナ・ランスターが派遣されたのだが――。

「誰が、こんなひどい事を‥‥!」

ティアナが痛憤の呻きを漏らし、私の胸にも抑えがたい憤怒が込み上げてきた。

あそこには採掘や竜の保護・観察に従事する800人余りの管理局員が駐在しており、当然彼らも星もろともこの暗黒の虚空に命を散らされたのだ。何のいわれもなく。

『正体不明のミサイル艦隊』は、既に私たちの中では敵と認識されており、私達には、可能ならば首謀者と構成員を逮捕するよう命令されている。

しかし、現状では敵が何者なのかすらわからない。
まずは敵の正体を掴まなければならないが、質量兵器を多数搭載する艦艇を多く擁する武装勢力など、この半世紀余り遭遇した記録がない。

「周辺空域に異常はないか?」
「ありません」」

XV級航行艦『クラウディア』は、私の義兄クロノ・ハラオウンの指揮の元、慎重に宇宙空間を進んでいた。万一の時はすぐ次元転移できる態勢で。

「せめて、敵の正体だけでも掴まないとな‥‥」
「そうだね、クロノ」

遭難した次元航行艦のうち、『バトン・ルージュ』の艦長はクロノの先輩魔導師だった。彼らやその家族のためにも、必ず敵を逮捕する。そのためにも、まずは敵を知らなければならない。

『クラウディア』は隣接する第144管理外世界『テレザート』に接近しつつあった。

ここにはおよそ10年前まで、ミッドチルダをも凌ぐ高度な文明が存在しており、次元航行手段を手中にするのも間近と言われていたため、管理局もコンタクトをとるタイミングを測っていたのだが、そのいたのだが、その矢先に世界を二分する内戦が発生し、エスカレートした揚げ句、住民のほとんど全てが死亡してしまった。

どうやら生存者がいるらしいのだが、何者かによって幽閉されているらしい。

「提督、惑星の向こう側に多数の艦船らしき反応があります!」
「!!‥‥よし、慎重に近づいて解析するぞ!」

オペレーターの報告を受け、クロノが指示を下した。

「ビンゴ‥‥かな?」
「そうあってほしいがね‥‥」

『クラウディア』は注意深く、惑星の向こう側が望める位置に移動する。

すぐさまオペレーターが解析にかかり、ほどなく結果が報告された。

「エネルギー反応を2ヶ所で確認!
手前は約40隻、大型艦です!‥‥向こう側にもう1隻。距離があるので詳しくはわかりませんが、やはり大型艦の模様! かなりの高速で互いに接近しています!
いずれの艦船もエネルギー反応は強大で、管理局が保有する全ての艦船の動力エネルギーを凌いでいます!」

「‥‥そんな‥‥」
「‥‥映像に出せるか?」
「手前の艦隊ならば。展開します!

ディスプレイに艦隊が映し出された。

「全身をミサイルで固めている…」
「艦首には超大型ミサイルが2本‥‥。一連の犯人は恐らくこの艦隊だろうな‥‥」

クロノが怒気を含んだ口調で呟く。
私も拳を固く握り締めた。
何としても彼らを逮捕したい。しかし、余りに彼我の数が違い過ぎる上、向こうは艦全体をハリネズミのようにミサイルで固めた戦闘艦、こちらはあくまで調査母艦的な艦船で、まともに渡り会えるとは思えない。

悔しいが、今の私たちにはどうにもできない――。

「――手前の艦隊、ミサイルを一斉に発射しました。目標は恐らく奥の艦船!」
オペレーターが緊迫した声を上げた。

無数の中小型ミサイルが奥にいる艦船を見舞う。

(逃げて!)

心の中で、ミサイルの雨に見舞われる船の無事を祈った。

「着弾します!」

例の艦船がいるあたりで無数の光が瞬く。

「あの船は反撃しないのか!?」

クロノが思わず叫んだ。
あの船は逃げるでもなく、最低限の迎撃だけでこちらの艦隊が放つミサイルに見舞われるままだ。

「動力系が故障したのか、それとも‥‥」

劣勢を一気に覆す手段を持っているのかも知れない。

「超大型ミサイルが発射されました!」
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