第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)

□タラン日誌
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(DE=デスラー紀元)


DE105.6.217

――ナスカ艦隊が、かの『ヤマト』を含む地球艦隊を奇襲し、いくばくかの損害を与えた由。

油断もあったのだろう。地球側からの反撃は限定されたものだった。

しかし、『ヤマト』から見覚えのある戦闘機が1機発進し、帰還しようとしたデバステーター1機を追撃し、煙を噴かせた。
そのデバステーターは母艦に戻ることはなかったという。

映像データを見た我が総統は一言、

「あれに乗っているのは間違いなくあの坊や‥‥コダイ・ススムだ」

コダイ・ススム…。
『ヤマト』の艦長代理として、地球の命運をその肩に背負って戦った若者。

我がガミラスにとってはいかなる手段を用いても討ち取るべき男だが、総統は実に嬉しそうなお顔をなさったが、それも束の間、すぐ真顔に戻られ、こう付け加えられた。

「ナスカは、あの戦闘機をどんな手段を使ってでも撃墜しなければならなかった。見逃したその代償は、途方もなく高いものになるだろう‥‥」

――どうやら、コダイは平和に浮かれてはいなかったようだ――。


DE105.6.242

――先年の地球進攻作戦時、彼らの恒星系・太陽系の第4・第5惑星の間にある小惑星帯に敷設した“デスラーズ・ネット(恒星系間通信傍受システム)”の一部再起動に成功した。

これで地球人の惑星間通信も傍受でき、我らの『ヤマト』復讐戦に多大なる貢献が望めるというものだ。

ちなみに、この事はナスカ提督には秘密にしている。

あの御仁は、我々の情報を取るに足らぬものと軽視しているようだからだ。
どんな貴重な情報も、活用する意欲と能力が必要だ。

さて、デスラーズネットが一部とはいえ復旧したのは真にめでたい事なのだが、些か予想外の事態が起きてしまった。

――我が総統は、地球防衛軍が太陽系内の各惑星や衛星の基地、あるいは艦隊向けに発信しているらしい娯楽通信を、殊の外お気に入りになってしまわれた。

地球人が言うところの『ウタ/ソング』という歌謡音楽、『マンザイ』という他人を笑わせる芸などだが、特にお気に入りなのが、地球人が『サンデー』という、定期的な休日の終わり近くに配信されている『ショーテン』というプログラムで、これの映像・音声データを欠かさず保存するようお命じになるのだ。

総統はお休みの前にそのプログラムをご覧になっているらしいのだが、その時間帯は何人たりともも絶対お部屋に近づけてはならないと厳命されている。
一体何故なのだ――?


DE105.6.304

遂に『ヤマト』が地球を出発、否、脱出した。

軍命令に逆らっての強行突破らしく、自軍の戦闘衛星を破壊しての念の入れように、総統は実にご機嫌麗しくあられた。

彼らの鮮やかな手際から見て、乗組員の中には、かつて我が軍を打ち破った精鋭が多数いるようだ。

月という衛星の基地からも、相当数の戦闘機が『ヤマト』に合流した模様だ。
彼らの中核も元『ヤマト』乗組員なのだろう。

面目を潰された地球軍本部だが、別任務で太陽系第2惑星付近にいる最新鋭戦艦『アンドロメダ』に追撃命令を出し、さらに第4惑星近くで訓練中の『シラネ』という新鋭艦も合流するらしい。
果たしてどうなるのか、私も興味深く見ていきたい――。
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