第1章:侵掠の彗星(白色彗星帝国戦役編)
□主砲全開!目標ヤマト‥‥‥‥マジ?A
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『アンドロメダ』に進路を塞がれた恰好の『ヤマト』だが、速度を落とさず、針路も変えずに直進し続け、『白根』も『ヤマト』の後下にぴったりつけて続航を続ける。
しばらくしてパク通信長が声を上げた。
「『ヤマト』と『アンドロメダ』の間に映像と音声の回線が開かれましたモニターしますか!?」
冴子が無言で頷くや、メインモニターに直立不動の古代と土方の姿が映し出される。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
3艦のクルーが固唾を呑む中、口火を切ったのは土方だ。
「多くは言わん、戻れ。
私がどういう男か、お前たちはよく知っているだろう?」
「‥‥お断りします。あのメッセージは司令もご存じでしょう?あれは紛れもなく宇宙の危機を訴えているんです!何も確かめずにいて、危機が目の前に来てからでは遅すぎます!」
古代もはなから譲歩する気はないようだ。
(‥‥そりゃ、弟子は師匠に似るものな)
弟分の強情ぶりに、冴子は内心で苦笑する。
冴子も古代進も、訓練学校と実戦部隊で同じ頑固親父コンビに鍛えられたのだ。
この回答は土方も十分予想していたのだろう。別段気分を害した風もなく、再び口を開いた。
「‥‥お前の見解を否定はしないが、1隻で何が出来るのだ?
‥‥悪い事は言わん。今なら私が何とかしてやる。戻れ!」
「お断りします!」
「‥‥わかった。ならば仕方ない。我々は実力を以って臨む。いいな!?」
「‥‥残念ですが、仕方ありません。
‥‥しかし、我々の考えは変わりません」
「‥‥そうか、わかった」
通信が切れた。
‥‥是非に及ばずか。
『白根』ブリッジに不安の声があがるが、冴子はそれを遮った。
「全砲門開け!全主砲、『ヤマト』の艦載機発進口に照準を合わせろ!
ミサイル発射管1番から4番は対艦ミサイル装填! 他は対空サイルを装填して待機!パルスレーザー砲スタンバイ!‥‥ぼやぼやするな、急げっ!」
躊躇するブリッジクルーに冴子の叱咤が飛び、慌ただしく艦内各所に指示が届けられる。
1・2番主砲の砲身に仰角がかかり、『ヤマト』を指向する。
「主砲、発射準備完了!」
「全ミサイル発射管、発射準備完了!」
「パルスレーザー砲、発射準備完了!」
次々と準備完了の報告が届く。
錬成開始から日が浅いゆえ、満足できるレベルには程遠いが、仕方あるまい。
「‥‥艦長、このままでは『ヤマト』、本艦と『アンドロメダ』の進路が交差。接触または衝突の恐れがあります!」
観測員が危険を喚起する。
「‥‥『ヤマト』の進路は?」
「依然として変わりません」
「‥‥よし、本艦も進路そのままだ」
「了解しました」
――完全に『ヤマト』『アンドロメダ』『白根』、三つ巴のチキンレースの様相を呈してきた。
さすがに冴子の顔にも汗が浮かんでいる。
多少は修羅場をくぐり抜けてきた自分もこうなのだから、ルーキーたちはさぞや生きた心地がしないだろう。
しかし、それは『ヤマト』『アンドロメダ』も同じだ。
否、一番しんどいのは土方以外の『アンドロメダ』のブリッジクルーだろう。
『アンドロメダ』の1・2番主砲が回転しながら仰角をかけ、『ヤマト』を照準に収めたようだ。
一方、ヤマトも艦を僅かに右舷に傾け、全ての主砲と副砲を『アンドロメダ』に指向している。
『白根』に対してはミサイルで対処するつもりだろう。妥当な判断だ。
「『ヤマト』、あと20秒で『アンドロメダ』に最接近! 本艦もあと25秒で最接近します!」
「‥‥‥‥」
ブリッジクルーは皆押し黙り、手に汗握っている。
観測員のカウントダウンの声だけがブリッジに響き渡る。