第2章:侵掠の彗星2plus(白色彗星帝国戦役〜インターミッション)

□エスティア@
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「こんなとこで油売ってていいのか?技術士官がよ」
「量産艦は他の連中がやってくれる。俺の担当は『ヤマト』だからな」
「なるほどな」

かけ蕎麦を啜りながら冴子と大山が軽口を交わす。

大山歳郎は真田に劣らぬ技量を持つエンジニアだが、アクの強い性格で上層部からの覚えはあまりよろしくない。
軍人としては規格外の男ゆえ、やはり規格外の『ヤマト』を手掛ける事になったのだろうか?

そんな事を思っていたら、大山が話題を変える。

「こないだお前がめっけてきた『エスティア』っつー船、なかなか面白い船だぜ」
「ああ、あの難破船か。そういえば、あれからどうなった?」

白色彗星を追って地球に向かう途中で発見した所属不明の難破船『エスティア』。
白色彗星撃滅が最優先だったため、工作隊に任せて艦隊はその場を離れていた。
そういえば、あれからどうなったのか?

「生存者が1人いた。というか、1人しか乗っていなかったんだ」
「1人?ワンマン船か?」
「いや、それなりに乗組員を要する船だったな。それに、設備も地球の艦船に近いものだった。生存者自体が、肌の色や髪、瞳なども地球人と寸分違わぬ男だしな」
「!‥‥そうなのか。」

冴子は目を丸くした。ガミラス人やガトランティス人は肌の色や頭髪が地球人とは異なっていたが、あの未知の船の乗組員は地球人と酷似したヒューマノイドだという。

「しかし、何と言っても不可解なのは動力部全般だな」

大山が目を輝かせ、口からメンマと海苔の欠片を飛ばしながら言う。

「それはわかったから落ち着いて食えよ‥‥で、動力の推測はついてるのか?」
熱中すると周りが見えなくなるところは出会った頃と全く変わっていない。

「波動エンジンや核・イオン系でもなければ化石系でもない」
「‥‥じゃあ、アレか?魔法とか魔術とかいう類か?」
「‥‥‥‥」

ほぼ冗談のつもりで問い返した冴子が見たのは、大山の驚いた顔。

「‥‥何で解った?」
「ジョークだったんだが‥‥マジか?」
「艦内、特に機関室内のあちこちに“マギリング”という表記があったし、機関自体の構造が不可解すぎる」

内容だけ聞くと解析に苦労しそうだが、大山は新たな玩具を見つけた子供の表情だ。

「乗組員はまだ目が覚めないのか?」
「命に別状はないようだが、骨折や打撲傷があるらしい」

冴子は溜め息をついた。

「で、『エスティア』はどんな船なんだ?」
「一口で言えば巡視船に近い。光線砲らしい武装も施されていたが、船体強度は相対的に見てかなり低い。
万一戦ったとしても、プランツ級(護衛艦)はもとより、『ゆきかぜ』にも敵うまいよ。ただ、次元転移能力があるらしい」
「!‥‥本当なら凄い能力じゃないか。
‥‥んで、『エスティア』の所属と乗組員の身元はわかったのか?」

個艦性能で問題にならないにせよ、組織の規模によっては敵対すると厄介だ。
今の地球はこれ以上敵を作るわけにいかないのだ。

『乗組員は“クライド・ハラオウン”。船籍は《時空管理局・本局》だ』
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