BOOK 1

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赤司君の前で大泣きしてから一週間が経った。あれから私は赤司君を好きになれるように彼が言った通り彼と居る時間を増やした。


登校は彼が朝練が無い日だけ一緒に行き、帰りは私が用事が無い限り彼の部活が終わるのを待って一緒に帰っている。


教室でも休憩時間は何故か向かい合って本を読んだり、前の授業でわからなかった事を彼に聞いたりして、すっかり毎日が赤司君で染まっていた。


「遊千、携帯を貸してくれ」


ちゃっかり私を名前で呼ぶ彼は少しずつ私の中に入ってきてるようで、少しこそば痒い気持ちになる。


「はい、って…言ってくれればアドレスくらい教えたのに」


「俺の、登録しておいたから。寂しかったら何時でも掛けておいで」


「じゃあ真夜中に鬼電するね」


「………」


「冗談だよ」



今じゃ冗談も言えるような関係になっていて、周囲は私と赤司君が付き合ってるんじゃないかという噂で持ちきりだった。


否定しようとしない赤司君に、初めは否定していた私が馬鹿らしくなって否定する事を止めると、それは学年全体に広がっていて…


何故か所々で痛い視線を向けられる。その度、赤司君が優しく「気にするな」と頭を撫でてくれて…いつしか、彼の隣が心地好くなっていた――…




「遊千、ちょっと話があるの」


赤司君と話していたところへあの子は現れた。最近は必要な時しか話して無かったせいか、久し振りに話したような気さえする。


…嗚呼、まだあの子の話があると言われただけで期待してしまう私が居る。



「うん、わかった。赤司君、ちょっと行ってくるね」


「…ああ」


悲しげに揺れた彼の瞳に何故か胸が痛む。ごめんね、赤司君…まだ私の中にあの子が居るの。


でもね、赤司君のお陰で前よりあの子を見ても苦しくならなくなったよ。あんなにも苦しくて仕方無かったのに…




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