BOOK 1
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僕達は遠回りをし過ぎていたみたいだ。初めから思った事を言葉にしていればこんな風に互いを傷付け合う事もなかったのにな。
僕も征十郎も考えが幼すぎたのかも知れない。まだ子供だから仕方無いと言えば仕方無かったかも知れないが、これからは二人で成長して行ければそれで良いよな。
夏休みが明け、新学期へと突入した僕達を待っていたのは中間考査。それが終われば体育祭に文化祭だ。
秋は行事があり過ぎて忙しい。中学校に比べ高校の行事の規模は大きい。それ故、前々から準備を進めるのだが…正直僕にはあまり関係が無いだろう。
成績に関しては中の上ぐらいの自信はあるし、運動音痴と言う訳でもない。文化祭に至っては少し変わった喫茶店をやるらしいが、あんなもの適当に接客すれば良いだけの話。
飾り付けや物資の調達は僕の役割じゃないしな。
夕飯を済ませた僕は部屋へ戻り、机と向かい合い宿題のプリントに手を付けるが、何故か僕の後ろにはベッドに座り本を読む征十郎の姿が。
「はぁ…あのさ、征十郎。此処、僕の部屋何だけど」
「僕に出て行けと?」
「…そういう訳じゃないけど」
普通に読書してるだけなら何も言わないが、征十郎は本を持っているだけで視線はずっと僕にある。それが少し…気になって落ち着かない。
ここ最近こんな風に征十郎が用も無く僕の部屋に来る事が多々ある。理由を尋ねると「遊千が居るから」と恥ずかしげもなく言う。
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