BOOK 1
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「お待たせッス!」
テーブルに並べられた料理を見て思う。洋風だな、と。征十郎が作るものは和食が多い。献立には絶対に味噌汁、漬け物は必須だ。
手抜きは有り得なくて、ムカつくくらい美味しくて何時も何も言えなくなる。
「…うん、美味い」
美味い…美味いけど、何かが違う。
「ホントッスか!良かったぁ〜!遊千っちって味に厳しそうだから結構緊張したんスよ?」
『僕が不味い料理を作るとでも?お前の味の好みは全て把握済みだ』
「………」
何で、今征十郎が浮かぶんだよ。彼奴は此処には居ないのに…
ぼんやり黙々と食べていると「遊千っち」と名前を呼ばれた。それに「ん?」と視線だけ向けると黄瀬は「そういうとこホント変わってないッスね」と笑う。
「今日俺が家に誘ったのは二人で話がしたかったから何スよ」
そうクルクルとフォークでパスタを巻きパクリと口に入れた黄瀬は真っ直ぐと僕を見る。
「だろうと思った。中学の時から気になってる事だろ?」
「当たりッス。でも、今日話聞いててわかったッス…俺が感じてた違和感はやっぱ存在してたって事が」
黄瀬は中学の頃から僕と征十郎の関係に疑問を持っていた。黄瀬だけじゃないのかも知れないが、コイツは他の奴等とは違って自分でも分からない痛い所を突いてくる。
それが嫌で中学の時はコイツを避けていた時期もあったな。でも、今その話を正面から受け入れられるのはきっと、自分でも薄々気付いているから。
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