BOOK 1
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『征ちゃん、遊ぼ』
『ああ、行こうか』
それはもうずっと昔の話だ。まだ征十郎が歪んでしまう前、手を繋いで二人で遊んでいた頃が懐かしい。
『征十郎、お前また…』
『これは遊びだよ、遊千』
何時からだろうか。征十郎が歪み、僕達が変わってしまったのは――…
「…っくぁ…」
昔はこんなんじゃなかったのにな。何て考えながら僕に馬乗りになり首を締める征十郎を眺める。
こうなった原因はあの日から多々来るさつきからのメールだ。征十郎にディスプレイに表示されたさつきの名前を見られたのだ。
「まだ繋がっていたんだ。あの日に切った筈じゃなかったのか?」
「違っ…っく…ぁ…」
口答えは許さないとでも言うかの様に締め上げる強さが一層強まる。首が熱い、息が出来無い…
何がそんなに気に入らない…?
僕が自分を裏切った彼奴等と繋がってる事がか?それとも自分だけ取り残されるのが嫌なのか?
「…っ……」
首にある征十郎の手を掴んでいた手を放し、体の力を抜いてただ奴を見詰めた。
「……何故抵抗しない?」
奴はゆっくりと首を締めるのを止め、赤と黄色の冷めた瞳が僕に答えを求める。
「して…どうなんだよ」
「それは諦めか?」
諦め?それは違う。征十郎に僕は殺せないとわかっているからの余裕。殺されても良いと思う安心感から出来る行動。
僕は別に生に執着している訳じゃない。かと言って死を求めている訳でもないが。
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