BOOK 1

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行く宛もなく適当に歩く。携帯も財布も無ければ、当然何処にも行けやしないし誰とも連絡を取る事が出来無い。


征十郎は…怒ってるよな…勝手にキレて勝手に家を出た挙句、学校までサボって…


怒ってない訳が無い。




「………」


僕が要らない子だというのは知ってたさ。昔からずっとあの人に言われ続けて来たんだから…


でも、僕には何時だって征十郎が居てくれた。征十郎だけが僕を受け止め愛して求めてくれたんだ。



僕には今も昔も…征十郎しか居なかった――…




「…征、ちゃ…っ」


征十郎を好きになって、改めて一緒に住んでると自覚して、暖かい幸せを感じる事が出来たんだ。


あの人と居てそれを一度でも感じる事が出来たか?答えは否。無かったよ、そんな事一度たりとも無かった…



「嫌だ…一人は嫌だ…っ」


泣きながら来た道を戻る。



僕は征十郎に甘えすぎてたのか…?征十郎の言う通りあの人と向き合う事が僕には必要な事なのか…?





「…遊千」


マンションの近くに来ると征十郎が居て、僕を抱き寄せ「すまなかった」と謝る。


何で征十郎が謝るんだよ。悪いのは駄目なのは僕だろ…?僕があの人と向き合えないから…



「違っ…お前が謝る必要何か…」


「僕が軽率だった。一年以上連絡を取ってないにしろ、あの人から受けた傷はお前の中からそう簡単に消える訳じゃない。お前が怒るのも無理はない」



だが。と続けた征十郎はゆっくりを僕を離す。そして携帯を開きその画面を僕に見せ付ける。


その画面には征十郎宛に送られてきたあの人からのメールで、内容には「再婚する事になりました。あの子と最後に話したい事があります、一度こちらに帰ってくるように伝え下さい」とあった。



「それで関係が修復するのか断たれるのかは僕にもわからないが、どちらにせよあの人がお前の母親である限りこの先の僕達の関係にも支障を来す事になるんだ」


「どういう意味だよ…?」



征十郎は携帯を閉じ、フッと笑うと僕の頬に手を伸ばす。




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