BOOK 1
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じゃあ何であの人が征十郎に連絡をしてきたんだ?僕に用がある訳じゃないだろ。捨てた娘に今更何を言う必要があんだよ。
「お前が気になっているメールの内容だが…」
「やっぱ良い、別に聞きたくない。…もう、良いだろ。あの人はあの人で勝手に生きてる。僕にはもう関係無い」
「あれでもお前の母親だろう」
「親でも殺すって言ってた奴の台詞かよ。それに、血の繋がりがあるだけであの人と僕にそれ以外の繋がりも関係も無い」
母親と言っても所詮は書類上での話。愛してもらった覚え何て一度たりとも無い。
吐き捨てる様に言えばリビングに重たい空気が流れる。征十郎の目を見る事が出来無くて僕は逃げる様に家から飛び出した。
征十郎が悪い訳じゃない、そんな事自分でもよくわかってる。それでも僕はあの人とは向き合えない。
お腹が空いても自分を生んでくれた人には恐怖から何も言う事が出来無い。
視線を向けたところで
『見ないでくれる?視界に入るだけでも腹が立つのよ!』
あの人を苛立たせてしまう。
遅く家に帰っても心配もされない。逆に舌打ちをされ、寒空の中…一晩中ベランダに閉じ込められもした。
『何でまだ生きてんの?あー…隣の赤司さんちに夕飯食べさせてもらった訳?だったら赤司さんちの子供になれば?』
居なくなる事を望まれる。
成長を喜ばれたかと思えば、自分の前から消えろと言われ、居場所何て初めからそこには無かったけれど…
『ねぇ、アンタもう直ぐ高校生でしょ。一人立ちくらいしてよね』
家ですら安らげ無かった。
あの人と関わる事が今の僕には恐怖すら覚える事を…何で征十郎はわかってくれないんだよ。
僕とあの人が向き合わなくったって僕達はずっと一緒に居られるだろ…?
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