あぁ、懐かしの友よ

□8 懐かしの「夢」3
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バクッバクッ
という心臓が激しく鼓動する。


オレは、恐る恐る電話を取った……

「……はい、加賀です。」

『おぉっ!君がriverかい!?いやー、遅くなって済まなかったね。実は、私の弟子たちに、新しい弟子が入るかもしれないって話したらよ、どんな奴なんだって聞かれてね。いやー、その腕はかなりのもん!だってプロの上段者を破った腕だからね!って言ってやったんだよ。まっ、その破られたプロが私なのだが!!そしたら、皆興味を持っちまってな!今までずっとお前さんの噂話をしていたのだよ!そしたら、遅くなってしまった。いやー本当にすまん!!」

…………マシンガントーク…………
凄い良く喋るな、この人………
なんだか、一気に脱力した………

「いや、大丈夫ですよ。」

『そーか、そーか!あぁ、そういえば、自己紹介がまだだったね。私は、一柳。知っての通り一柳棋聖さ!!river、君は!?』

あー……確かに自己紹介してねーや……
遅過ぎだな………

「オレは、加賀 大河です!。ぜひとも、一柳先生の門下に入れて下さい!!」

オレは、自分からそう切り出した。
だって、そーじゃねーと、こんにマシンガントークをする人相手じゃ、いつまで経っても終わらないと思ったからだ。

『あぁ、もちろん大歓迎だよ!なんせ、君の実力は、証明されているからね!!そうだ!早速、親御さんとの挨拶も兼ねて明日の研究会に親御さんと参加してみるかい?』

願ってもない申入れ!
オレはもちろん

「行きます!!」

と即答した。

『そうか、そうか。場所は、私の家なのだが、君は場所を知らないからね。よし!最初だし、私自ら迎えに行こうではないか!!』

!?

ちょっと待て!!
これから師匠になる人に、そんなことをさせるべきではない!!

「いえ!住所さえ教えていただければ、自分で行けます!!父にも一緒に来てもらうので!先生自らなんてとんでもない!!」

『そうかね。じゃぁ、私の家の住所だが、×××市××××× ×-×-×だよ。あと、電話番号は、×××-×××-×××。もし、道が分からなくなったら、かけてくれ。』

オレは、急いでメモを取る。
………良かった…………
電話の横に、メモ用紙とペンを常備させといて………

「分かりました!あと、何時くらいに伺えば良いですか?」

『おぉ、そうだな……研究会自体は14時からだから、その30分前くらいに来てくれないか?今後について、親御さんと話したいからね。』

オレは、メモ用紙に時間もメモする。

「はい、父にも伝えておきます!」

『大河君に会えるのを楽しみにしているよ。じゃぁ、おやすみ!』

「はい!失礼します。」

ガチャ

オレは、電話を元の場所にもどす。
その瞬間…………

くぁーーーーっっ!!
楽しみにしているよ。
ってこっちのが楽しみにしてますよ!!
あー、早く明日になんねーかな!
研究会ってことは、先生の他にも沢山のプロが来んだろ!?
やべぇ!やべぇ!!

オレは、思わず小躍りをしてしまった………
いや、ね……
すっごく嬉しかったんだが、流石に先生との電話中に騒げねーだろ?
だがら、電話が終わった途端につい、ね……

兄貴が部屋に戻っていてくれて良かった……
こんな所見られたら、しばらく笑のネタにされちまう………

オレは、兄貴が来る前までに、落ち着こうと思い、深呼吸を数回する。
そして、落ち着いたことにより、オレはあることを思い出した………

「あ、……オレ、父さんの予定も聞かずにOKしちまった……」

オレの親達は、休みの日も基本的に仕事に行く………

「………ってことは、もしかしたら、明日の研究会行けねーかもしれねぇってことか?」

いや、それはないだろう……
父さんの仕事好きもなかなかだが、碁もそれに負けないくらい好きだ。
息子のオレが、棋聖を持つ一柳先生の弟子になるのに、反対するわけねーし、せっかく、プロに会える機会を逃すはずがない。

…………ない……よな?

オレが、うだうだ悩んでいると、玄関の方から

「ただいまーー。」

と言う声が聞こえた。

父さんだ!!
何で、今日はこんなに早いんだ?
土曜日だからか?
いや、いつもならもっと遅い………
父さんが早く帰って来るとしたら、仕事が一段落して、時間が空いた時か、明日が出張の日だけだ………

……………まさか、出張じゃないよな………?

そんなことを考えているうちに、父さんは、リビングへとやって来た。

「お、大河じゃないか!珍しいな、お前が何もせずにリビングにいるなんて。お前、いつも部屋に引きこもっているじゃないか。」

失礼な………
部屋に引きこもってるのは、父さん達が帰って来るのが遅いから、もう寝てんだよ!
朝も父さん達の方が早えーし。

「………そういう父さんこそ、今日は珍しく早えーじゃねーか?なんで?」

「あぁ、仕事が一段落してな。早く帰ることになったんだ。」

セーーーフッッ!!
良かったぁ、出張じゃなくて。
これなら、希望大だ!!

「じゃぁ、父さん、明日暇だったりする?」

「いや、仕事だな。まぁ、いつもよりは、大変ではないがな。というより、仕事内容はあんまりないんだが、仕事をしていないと落ち着かなくてね、無理に出ているような物だよ。」

仕事中毒かい!?
だが、これならいける!!

「実はさオレ、一柳先生に弟子入りすることになったんだ。」

オレがそう言った瞬間、父さんはフリーズした。

「それで明日、一柳先生の研究会に弟子入りの挨拶も兼ねて、親御さんと来てくれって言われたんだけど、来てくれねーか?」

「もちろん、行くさ!!」

恐ろしいほどの即答………
やっぱり、父さんの碁好きもなかなか凄いな………

「サンキュー。」

「というか大河、お前、いつのまにそんなことになってたんだ!?その上、プロに弟子入りをするぐらいの棋力………そんな力どうやって身につけたんだ?しかも、そのプロがあの一柳棋聖!?つまり、俺は明日、一柳棋聖に会えるんだな!!」

父さーん………
テンション高いですわ………
ミーハーですかい……

「ネットで知り合ったんだよ。そんで、12歳でその棋力だったらプロになれるって言われて誘われたんだ。じゃ、明日の13時30分にこの住所の所に連れてって。そこ、一柳先生の
家だから。」

父さんは、そのメモ用紙を崇めている………
いやぁー、不気味だな………
オレは、リビングに一人、怪しい行動をしている父さんを残して、部屋に戻った。

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